文字サイズ
    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『「本を売る」という仕事』 長岡義幸さん

    町の本屋に目を向けて

     撮影でお邪魔した「昭和書房」(横浜市青葉区)は、50平方メートルほどの店内に単行本や雑誌、漫画、文具などが並ぶ、一見典型的な町の本屋さんだ。初めて訪れるのに懐かしいが、本書にも登場する同店には特色がある。住民の高齢化が進む団地のすぐそばにあり、ラジオ体操後にも寄れるようにと早ければ朝6時に開店。店頭で雪かき用スコップや野菜が売られることも。客の要望を受け、書店の枠にとどまらない経営を行う。

     同様に特色ある約100の書店を、出版流通専門紙出身のフリー記者が、北に南に2年以上かけて訪ね歩いた。子供への読み聞かせ会を定期的に行う書店、店主が客用の選書を請け負う書店、被災地で頑張り続ける書店……。「半分は自分の郷愁、半分は町の書店に残ってほしいとの気持ち」から取材を始めたが、続けるうちに「客と会話し、関係を作っているお店が元気なのだ」と見えてきた。

     もちろん、書店の現状は厳しい。約20年前は2万軒を超えた全国の書店数は、約1万2500軒まで減った(昨年5月、出版社アルメディア調べ)。減少分のほとんどは町の中小書店で、取材後に閉店した店もある。本書でも低い利益率など、書店経営が困難な理由も詳しく記される。一方で、書店が媒介となり人と人がつながりだすような、前向きな事例も盛り込んだ。

     原点は、福島県小高町(現・南相馬市)での幼少時代。近くに書店がなく、学校図書室の本を毎日借りた。書店への憧れは募り、10キロ離れた中学への自転車通学も、書店に寄り道する日々がうれしくてたまらなかった。SFや切手など、趣味の変遷で読む本も変わった。「ネットと違い、店内を見ているだけでも色々な発見がある。書店は社会の窓。近所の本屋さんにもぜひ足を運んでほしい」

     (潮出版社、1600円)

     小林佑基

    2018年02月27日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大手町モールのおすすめ
    帆布鞄
    リンク