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    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『刑事の血筋』 三羽省吾さん

    「家族」が描く警察小説

    • 三羽省吾さん
      三羽省吾さん

     28年前、岡山県警在職中に56歳で病死した父は、第一線の刑事だった。「滅私奉公的に仕事に打ち込み、子供の頃、遊んでもらった記憶がない。家では怒ってばかり。父のことは苦手でした」。警察官の家族の思いを知る作家が、デビュー17年目にして初めて本格的警察小説を出版した。

     瀬戸内の架空の地方都市。父の跡を継ぎ警察官になった津之神つのかみ西署の刑事・高岡守は、薬物の元売人が殺された事件の捜査に飛び回る。兄の剣は警察庁キャリアだが、東京から県警本部に異例の異動をしてきた。目的は、不自然さの目立つ県警の内情を探ることに加え、15年前在職中に死んだ父が晩年に流された黒いうわさの真相を知ること。

     2002年にデビュー。青春、スポーツ小説など多彩に手がけてきたが、「あまり警察のことは書きたくなかった」という。厳しかった父や、転勤が多いなど家族の負担も大きい仕事へのわだかまりもあったのだろう。だが、編集者に勧められ、「互いに家族のことを知っている警察官舎暮らしの特殊さや子供から見た思いなら、自分の隠し球にできるかも」と筆を執った。

     エリート警察官僚と所轄の下っ端刑事という対照的でそりの合わない兄弟が、組織が覆い隠してきた巨大な悪に立ち向かう。警察小説の本道をゆく非情で骨太のストーリーを包み込む、リアルな家族の温かみにほっこりさせられるのがユニークだ。

     警察官は<飯をう手段である前に生き方だ>。終盤の守のセリフが印象に残る。小説で日々犯罪者らと対峙たいじする昼間の刑事の姿を想像することで、家に帰った父が自分に怒った理由が分かった気がしたという。「小説家も生き方かもしれないとも思う。でも、亡くなった父親が読んだらすごく怒りそうな気がする」と笑った。

     (小学館、1500円)

     佐藤憲一

    2018年03月13日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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