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    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『10万個の子宮』 村中璃子さん

    ワクチンの安全訴える

    • 村中璃子さん
      村中璃子さん

     困難の中でも科学的理解を広めようとした姿勢が認められ、昨年、英科学誌ネイチャーなどが主催するジョン・マドックス賞を日本人で初めて受賞した。「日本だけで毎年3000人が子宮けいがんで亡くなり、1万個の子宮が摘出されている。10年状況が変わらなければ、10万個の子宮が失われてしまう」。医師そしてジャーナリストとして取材し、子宮頸がんワクチンの安全性を訴えてきた。

     若い女性の患者が増えている子宮頸がん。原因となるヒトパピローマウイルスは性交渉で感染する。感染を防ぐワクチンは、国内では性交経験前の10歳代の少女を対象に、2013年から国が接種を勧める定期接種となったが、その直後、厚生労働省は接種を積極的に勧めるのを中止した。接種後、体の痛みや歩行障害などの訴えが相次いだからだ。少女らが激しいけいれんを起こし、車いすに乗る映像は、社会に衝撃を与えた。

     こうした症状は、思春期には身体に異常がなくても、心的要因から表れることがあるという。だが、接種とは関係ないと診断する医師は「気のせいと言われた」などと攻撃され、取材を始めた14年には「すでにみな口を閉ざしている状態だった」と振り返る。

     取材執筆を進める中で、薬害を訴える市民団体の関係者などから直接、間接的に非難された。実験を不備だと指摘した記事をめぐり訴訟も抱える。それでも、接種と副反応の因果関係には「科学的エビデンス(根拠)がない」。

     社会学を学んだ後、公衆衛生に興味があったため医学部へ。「医学的な判断を自分で下せるからこそ書けた」と語る。現在は医師として働きながら、京大で研究者の卵に科学を一般の人にどう伝えるかを講義している。これからも「医療が絡む社会問題をテーマに書いていきたい」。(平凡社、1600円)

     金巻有美

    2018年03月27日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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