文字サイズ
    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『ギガタウン漫符図譜』 こうの史代さん

    マンガの読み方共有を

    • こうの史代さん(小林武仁撮影)
      こうの史代さん(小林武仁撮影)

     「マンガの描き方の本はたくさんあるけれど、読み方についての本は意外とない。以前からこんな辞典があればいいなと思っていました」

     漫符とは、マンガ特有の表現記号のこと。「この世界の片隅に」で、すずさんの頭の上によくはねている「汗」もその一つだ。これらの用法を一つずつ四コママンガで説明した。しかも、登場するキャラクターは、日本最古のマンガとも言われる絵巻物「鳥獣人物戯画」のウサギやカエル。“マンガ表現愛”が虹のような階調をなす異色作だ。

     母親は「マンガを読めない人」だった。なぜ、当たり前に読める人と読めない人がいるのか。そう考えるうち「今のマンガは、母のような読者に不親切ではないのか」と思い至った。「マンガの読者は減っているのに、業界の人にあまり危機感がないような気がして。このままでは、恐竜みたいに、マンガがある日突然なくなってしまうことだってあるかもしれないのに」

     実は、漫符は自分の他の作品ではさほど使わない。微妙な感情表現に、単純すぎる記号は合わないからだ。それでもこの本を描いたのは、「先達の仕事への敬意を忘れたくないから」だと語る。

     ボールペンで古事記を描いたり、本作でも筆を使ったり、常に新技法に挑む。震災後の東北をニワトリが旅する「日の鳥」という作品にも取り組む。「この世界――」を含め、諸作品の間につながりがないようにも見えるが……。

     「一緒に読んで、共有してほしいんです」。戦争を知っている人と知らない人。地震で被災した人としていない人。マンガを読める人と読めない人。それぞれに違う人々が、それぞれに読めて、お互い語り合うきっかけになるマンガ。それがこうの史代の世界――。マンガの可能性は、こんなにも大きい。

     (朝日新聞出版、840円)

     石田汗太

    2018年04月10日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大手町モールのおすすめ
    帆布鞄
    リンク