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    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『朝鮮大学校物語』 ヤン ヨンヒさん

    人間は面倒くさいもの

    • ヤン ヨンヒさん
      ヤン ヨンヒさん

     「吐き出したかったんだと思います」。南北に引き裂かれた国家や家族の問題と向き合った映画「かぞくのくに」のシナリオで2013年に読売文学賞を受賞した在日2世の映画監督が、初の小説に挑んだ。自身が通った朝鮮大学校の生活をもとにした。

     1983年の春、大阪育ちのミヨンは東京の朝鮮大学校に入学した。情報誌「ぴあ」を愛読し、舞台を見るのが好きだった彼女は、全寮制で日本語禁止、日曜の外出は原則午後8時までなどと規則ずくめの学生生活に戸惑う――。

     「過去のものを取っておくのは嫌い」で、日記はつけていない。記憶で細部を埋め、虚構を交え膨らませた。バブルに向かう時代とは無縁の、自分とは何者かを問う日々を送る主人公の姿が胸を突く。

     自身は64年生まれ。父は朝鮮総連の活動家で、70年代初めに10代だった3人の兄は、帰国事業で北朝鮮に移住した。親の意向もあって進んだ大学校時代は、自分の行動が兄の生活に影響を与えないか不安になりながら、休日は演劇を見て心のバランスを取った。「4年でも大変です。逃げ場のない兄たちはどんな気持ちで暮らしているか考えていました。ビートルズやお好み焼き、吉本のお笑いが好きだったのに」

     北朝鮮を訪ねた際、兄は「おいしいもの、楽しいもの、気持ちいいことを全て味わってほしい」と言ったという。

     <私が在日だってこと、朝鮮人だってこと、気にしてほしいの>。作中で、主人公が恋人に激しく迫る場面がある。

     「どの国の人でも、本当はみんな面倒くさいものを抱えている。壊れていない人間や家族、国なんてありません。お互いの不完全な部分を見せ合い、一緒に生きていきたい」

     学生時代に乗り換えで使った東京・国分寺の駅近くのカフェで語った。(KADOKAWA、1500円)

     待田晋哉

    2018年04月17日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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