<速報> 関脇栃ノ心、大関昇進が事実上決定
    文字サイズ
    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『地球にちりばめられて』 多和田葉子さん

    柔らかな旅する物語

    • 多和田葉子さん
      多和田葉子さん

     ドイツで30年近く執筆を続け、各地の朗読会や大学の文学行事などにも積極的に参加する「世界を旅する」作家だ。新刊を出すと、日本滞在中に取材が集中する。気分を変えてもらうため、版元の近くにある護国寺で撮影を行った。

     「先日『雪の練習生』のスペイン語訳が出版された際に、ホッキョクグマが登場するためか動物園で記者会見がありました。でも、お寺で取材は初めてかな」。興味深そうに出された煎餅を食べた。

     今回の新刊も、旅の物語だ。主人公の女性Hirukoは、欧州留学中に故郷の「列島」が消滅し、外国で生き抜くため、多くの人に通じる人工言語を自分で作って話し出す。そこに、彼女の言葉に関心を抱く研究者の青年や様々な事情を抱えた若者が加わり、一緒に各地を訪ね始める。

     「『容疑者の夜行列車』をはじめ、私には一人の人間が旅する物語があります。今度は異なる文化的な背景を持つ人が集団で移動する話を書いてみたくなった」と話す。

     若者たちの物語となったのは、1960年に東京で生まれ、早大卒業後に渡独した著者ならではの思いがあった。「私の学生時代は東西冷戦下だったし、インターネットもなかった。今の学生とは、全く違う環境です。この小説により、若い人と時代を超えて通じ合うものを見つけたい」

     物語は続編もある。言語、移動、現在の日本への危惧の念――。著者の文学世界を凝縮させながら、柔らかな心を持った長編になりそうだ。

     帰り際、今後の予定を聞くと、イタリアやノルウェー、フィリピンなど多忙を極めていた。世界の様々な人に会い、多くの言葉を交わすはずだ。

     「言語は私にとって、歴史や社会、人間を見せてくれる窓のようなもの。言葉で小説を書かなければ、私は病気になったかもしれません」(講談社、1700円)

     待田晋哉

    2018年05月15日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大手町モールのおすすめ
    帆布鞄
    リンク