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    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『パンと野いちご』 山崎佳代子さん

    内戦下の食べ物の記憶

    • 山崎佳代子さん
      山崎佳代子さん

     2度の世界大戦や1991年に始まった旧ユーゴスラビア内戦など、たび重なる悲劇を経験したバルカン半島。セルビアのベオグラードに暮らす詩人で翻訳家の著者が、内戦時代を中心に30人余りの男女から、混乱時にどんなものを食べたのか聞き取った。

     「日本の人には遠い場所に見えるかもしれないけれど、食べ物が絡めば身近に感じられるかなと思って」と語る。

     内戦で停電が起き、最初は冷凍庫の肉を解凍して食べ、麺類やジャム、建物の周りに生えるイラクサの順に口にし、飢えるに至ったと、農地が少ない都市部での食料事情を証言した男性。別の女性は街が空爆を受けた日、ズッキーニの肉詰めホワイトソースあえを作り、その後、理由は分からないけれど、同じメニューを調理していないと語った。

     本をまとめるまで、3年かかった。「食べるとは、食材を買い、料理し、誰とテーブルを囲むかを含め、人間にとって大きな仕事。語るのに時間がかかる人も、体を揺さぶって生き生きと話す人もいた」

     1956年生まれ。北大露文科を卒業後、旧ユーゴスラビアのサラエボ大に留学し、81年にベオグラードに移住。3人の子どもに恵まれた。だが独自の社会主義を築き、「豊かな個人生活があった」という同国は冷戦終結後、民族対立が激化し、崩壊した。2001年から12年当時の日々を記す『ベオグラード日誌』で読売文学賞を受賞した。

     世界から戦禍は絶えない。

     「現代の戦争の技術は、第2次世界大戦時より進みました。でも戦争をしたい人と同じほど、二度と繰り返したくないと語る人がいる。国家や政治など大きなことより、誰かの話を聞き、一緒にご飯を食べる日常を大切にしたい」

     現地名産の干しパプリカと一緒に、写真に収まった。本書は、15日発売。

     (勁草書房、3200円)

     待田晋哉

    2018年05月22日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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