文字サイズ
    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『山猫クー』 川口晴さん

    猫が変える人の感情

    • 川口晴さん
      川口晴さん

     少女と飼い犬の成長と別れを描き、映画化もされ50万部を超えた『犬と私の10の約束』から11年。今度は京都を舞台に、幻想的でほっこりした物語をつむいだ。

     猫好きの姉妹と犬好きの男の、楽しい共同生活が突然終わる。悲しむ男女の前に現れた捨て猫は、どんどん大きくなっていき……。「動物との出会いが、人の関係や感情を変えることがあるということを描きたかった」と振り返る。

     「犬と猫のどちらの方が好きかは、差し支えがあるから言わない」と笑うが、小学生の頃から動物全般が好きだった。男女の物語を描こうと思っていた今回も、体長1メートル50にもなるシベリアオオヤマネコを飼う人の動画をインターネットで何げなく見つけ、お話の触媒として使うことに。

     小説オタクだったというものの、いきなり小説家を目指すのは難しいと、同じように好きだった映画の道に入った。松竹で脚本家やプロデューサーとして活躍、「岸和田少年愚連隊」「血と骨」「クイール」「母と暮せば」など、多くの作品に携わった。その傍ら、妻で詩人の川口晴美さんにちなむペンネームなどを使い、小説も書いてきた。

     撮影ができるのかなどを考えず、壮大な物語が展開できる小説。俳優が演じることでキャラクターや物語を、強くリアルに伝えられる映画。それぞれの良さを意識し、今後も垣根を意識せずに取り組みたいと思う。「(今作も)映画にもなるようにしたいと思って書いた」

     中でも力を入れていきたいのがコメディーだ。「読んで笑ってもらうという読者との関係が、すごく気持ちいいから」。今作も、悲しい要素をそのまま際立たせたくはなかったという。たしかに、悲しさよりも、何げない日常がいとおしくなってくるような物語だった。(河出書房新社、1300円)

     小林佑基

    2018年05月29日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大手町モールのおすすめ
    帆布鞄
    リンク