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    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『野生のベリージャム』 小島聖さん

    自然の中で心解き放つ

    • 小島聖さん
      小島聖さん

     映画や舞台で活躍する女優が、みずみずしい文章でつづった初のエッセー集。執筆の契機は、米国カリフォルニア州の自然歩道「ジョン・ミューア・トレイル」への旅だった。全長340キロを、重さ20キロの荷物を背負って20日間で歩いた。鮮やかな緑、青い空、川のせせらぎ――。目に映るものすべてが美しかった。

     「とにかく楽しかった。こんなに素晴らしい自然があることをいろんな人に知ってもらいたくて、今までに山歩きで経験したことをまとめる本を作ろうと思いました」

     山歩きを始めたのは父の死がきっかけだった。「聖」という名前は、標高3013メートルの南アルプス聖岳に由来する。生前に聞いた話を思い出し、面影を探して登った。高山植物が咲き乱れ、優しい光が差し込んでくる。そこは天国みたいな場所だった。

     「いろんな思いがあふれましたが、湿っぽい気分にはならなかった。そして、改めていい名前だと実感した」

     大自然の中で心が解き放たれ、やがて世界各地を訪ねるように。チベットの山間部では家庭料理を習い、フランスではモンブランの山頂でモンブランを食べた。麓の街でケーキを買い、ザックに忍ばせて登頂したのだ。

     「私にとっては食も大切なテーマ。持って行った食材や、簡単な料理のレシピも本には入れました。旅って非日常な気もするけど、食べることは日常につながっている」

     都市と山を行き来する生活には様々な発見がある。妊娠6か月で訪れたアラスカの景色は、結婚前にパートナーと2人で行った時と違って見えた。「この本には自分の人生が詰まっている。原稿を書きながら思い出がよみがえってきたし、気持ちの整理になった」。いつか家族3人で立つ荒野がどう見えるのか、今から楽しみだ。

     (青幻舎、2000円)

     淵上えり子

    2018年06月05日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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