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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・納富信留(ギリシャ哲学研究者・東京大教授)

    『情報社会の〈哲学〉』 大黒岳彦著

     グーグル、ビッグデータ、SNS、人工知能・ロボットと、現代社会では「情報」が決定的に重要な役割を果たしている。本書は、マスメディアからネットワークメディアへと転換を遂げた「情報社会」を、人類の社会構造メカニズムの問題として哲学の立場から論じていく。マクルーハンのメディア論やルーマンの社会学を新たな角度から再検討し、情報社会の現状を広い視野から見据える試みである。

     興味深いのは、グーグルが「汎知はんち」希求の歴史の中で、ビッグデータが統計学の発展史で、人工知能の発展が二つの系譜の相克で捉えられる時に見えてくる文明論的なパラダイムシフトである。日進月歩する情報機器・環境は私たちの生活や仕事を一変させているが、その変化に追われる中で、深層で何が起っているのかが見失われる。実際、個々の技術発展がどれほど根本的な転換を伴うのかは、見極めるのが難しい。著者はそれらに冷静な査定を与えてくれる。

     終章では情報社会の多元的倫理の可能性と限界が検討される。人間、知性、社会とは何かを問い直す哲学の挑戦が必要となる。(勁草書房、3600円)

    2016年10月17日 05時22分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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