文字サイズ
    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・出口治明

    『TRYADHVAN』 古賀絵里子著

     黄色い紐綴ひもとじの本書を見つけた時、なぜか心がざわめいた。タイトルは何と読むのだろう。どうやらお寺を舞台にしたモノクロームの写真集のようだ。しかし、どのページも僕の視線をとらえて離さない。やがて赤ちゃんがまれる。最後までページを繰って、写真家がこの子どもの母で、このお寺の住職が夫らしいことに気がついた。

     題名のTRYADHVAN(トリャドヴァン)とはサンスクリット語で、過去世、現在世、未来世の「三世さんぜ」を表す仏教用語であるらしい。何げないお寺の日常を淡々と切り取るようにみえて、その実、写真家の眼差まなざしは三世の家族の絆と生、性、聖の不可思議なつながりをしっかりと見据えている。それがこの写真集の強靱きょうじんな引力となっている。

     優しく絡み合った裸の二人の手から始まる写真集は、冬の川の流れで終わる。三世の輪廻りんね転生が見事に構成されている。

     赤々舎 6000円

    2017年02月06日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大手町モールのおすすめ
    帆布鞄
    リンク