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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・三浦瑠麗(国際政治学者・東京大講師)

    『キャスターという仕事』 国谷裕子著

     23年間にわたりNHKクローズアップ現代の顔を務めた国谷さんの本である。ニュースの現場を最大限尊重しつつ、インタビューを本領とする彼女らしい、素晴らしいエピソードが詰まっている。

     白眉は第7章、殊に石原慎太郎氏に切り込んだ部分かもしれない。生放送の真剣なインタビューの難しさを部分的に知っている身として、いかに大変なことか、よく分かる。

     とはいえ読者が注目するのは、菅官房長官との平和安保法制をめぐるインタビューで「しかし」と根問いした思いの告白だろう。反論は日本文化に馴染なじみにくく、居心地が悪い。しかし、国谷さんが言うように番組には必要なものだ。けれど、私が改めてそのやり取りを読んだとき、お二人はすれ違っていた。質問者によって埋められるべき、茶の間と世界との隔たりはかえって広がっていた。インタビューである以上、聞き手は引き出したいものを知っていなければならない。分からないものは引き出せないからだ。

     もし国谷さんに問いかけたいことがあるとすれば、それはあったのでしょうか、ということだ。ふと、そう考えた。

     岩波新書 840円

    2017年03月20日 05時21分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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