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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・服部文祥(登山家・作家)

    『シャクシャインの戦い』 平山裕人著

     シャクシャインの戦いとは、江戸時代の初期に蝦夷えぞ地で起こったアイヌ民族の蜂起である。狡猾こうかつな和人が、純朴な先住狩猟採取民を欺いて怒らせ、武力で鎮圧したうえに、差別と搾取を強化した、と語られることが多いが、それは一面に過ぎないことを本書は明らかにする。

     アイヌには文字がなかったため資料となるのは、江戸時代の諸藩の記録、外国人の日記など。それらを慎重に擦り合わせ、伝承や古地図なども参考に当時の状況が浮き彫りになっていく。

     中世以降、アイヌの生活は海上交易が重要部分を占めるようになるが、徳川幕府の後ろ盾をうけた松前藩は取引を独占し、不当な条件を押し付けた。さらには和人がアイヌの地に入り込み、山や漁場を荒らすようになる。不満は各地のアイヌに広がり、日高地方の首長シャクシャインの呼びかけで、一斉に蜂起した。

     多数の資料から見えてくるのは、時に狡猾で、時に好戦的、交易で磨いた国際感覚を持ち、人間味にあふれるアイヌの姿だ。和人の動向も含め17~18世紀のアイヌモシリ(北海道)全体を復権させた好著である。

     寿郎社 2500円

    2017年03月20日 05時22分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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