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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・伊藤亜紗

    『アドルフ・ヴェルフリ』 服部正監修

     渦巻き、ほどけ、並走する装飾帯。天使たちは無言で目をらし、奏でられるのを待つ音符たちの横で、利子を計算する数字が無限の桁をたたき出す。1920年代に見出みいだされ、既存の美術にカウンターパンチをくらわせた「アール・ブリュットの王」、アドルフ・ヴェルフリ。幼くして孤児となり、性的暴行未遂容疑でスイスの精神病院に生涯抑留された。作品は、30年以上にわたる入院生活の中で描かれたものである。

     ものを作る作業は小さな選択の連続である。この線をどちらに曲げるか、どんな間隔で点を打つのか、余白にどんなモチーフを入れ込むのか。課題を設定するのも自分なら、それに答えるのも自分だ。人生において限られた選択肢しか手にできなかったヴェルフリが、制作においては無数の選択肢を獲得し、誰にも邪魔されずに迷い、選び取る。不可侵の「自律」の興奮に、すべての細部が沸き立っている。

     国書刊行会 2500円

    2017年03月27日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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