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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・尾崎真理子(本社編集委員)

    『ぼくの美術ノート』 原田治著

     原田治のグッズ目当てで「ミスタードーナツ」に通った女子が、1990年代までかなりいたと思う。一見アメリカ調の「かわいい」をきわめたイラストレーターは、知る人ぞ知る辛口の文章家でもあった。「芸術新潮」連載コラムをまとめたコンパクトな本書は、軽みをむねとしながらも、何十年がかりで好きな作家、作品を集め、その美を考え続けた好事家の執念が、案外ずっしり伝わってくる。

     底流に潜むテーマは「美人画論」とみた。50年代のアメリカンドリームを代表する画工エルブグレンの描いた、完璧な脚線美と蠱惑こわく的な表情。同時代の日本で、獅子文六の新聞小説を〈いとも軽快に、しかも間然する所なく〉盛り上げた、宮田重雄による躍動的な素描。さらに年代を遡り、〈理想的な女性美〉を挿絵にひらいた小村雪岱せったいの項では息をのんだ。上部に大きな余白を取る雪岱の画面構成の秘密が、同業者ならではの鋭さで解かれていたのだ。

     昨秋70歳で亡くなった著者に新聞小説の絵を依頼できなかったのはつくづく残念。カラー写真で紹介された収集品を、間近で鑑賞したくなった。

     亜紀書房 2000円

    2017年04月17日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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