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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・三浦瑠麗(国際政治学者・東京大講師)

    『あやつられる難民』 米川正子著

    加害者になり得る支援者

     いかにも目をくタイトルだ。シリア情勢が悪化してから頻繁に報じられている難民問題。しかし普通に暮らす人々にとっては遠い存在だろう。この話題を扱うときには、具体的な政策の話としてではなく、なんとなく「優しい」言論をしていればよいことになっている気がする。

     そんな生ぬるさを象徴するエピソードが、「難民はカッコイイ」という国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)主導のイベントだ。「果たして、自分たちも難民になりたくて『カッコイイ』と叫んだのだろうか」という本書の指摘は核心をいている。

     「ブラック・イズ・ビューティフル」(=黒人は美しい)という表現を難民問題に応用してはならないのは、それが単に身体的特徴や個性ではなく、差別され迫害される立場に陥ってしまった被害者としての属性だからだという。誰が好き好んで迫害されたいだろうか。まったくその通りである。被害者を救おうとする人々が、抑圧されているものと同化するふりをしながら、冷酷に害を及ぼすことがままある、という悲しい人間社会の現実がそこにある。

     本書は難民利用や難民のおかれた地位などの問題を様々に暴いていく。認定や数をめぐっての国家の政治的欺瞞ぎまん。人々を再定住させず、難民として所在なくキャンプに住まわせておいた方が特定の政治勢力の大義が持続するという理由で、難民の地位に留めおかれる構造。保護や援助に携わる者が、仕事をするにあたって、お金の出し手ばかりを向いているという状況。これらの問題を、あまりに率直なエピソードを交えながら訥々とつとつと語っていく。

     彼女の言葉が諸所で胸に突き刺さるのは、国連ボランティアやUNHCRの職員として実際に難民保護に関わってきた実務家であり、その反省を交えながら書いているからだ。期待に応えられなかった自分、負の構造を作り出す側に加担してしまったかもしれない、という真摯しんしな告白が、残響して尾を引く一冊だ。

     ◇よねかわ・まさこ=立教大特任准教授。活動経験はルワンダなど。著書に『世界最悪の紛争「コンゴ」』。

     ちくま新書 940円

    2017年04月17日 05時23分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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