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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・稲泉連(ノンフィクションライター)

    『魂でもいいから、そばにいて 3・11後の霊体験を聞く』 奥野修司著

    亡き人との「再会」記録

     淡々と記録される悲しみの深さに、読み進める手が幾度も止まった。それでも読まねばならないという思いに駆られ、1ページずつをみしめていく。様々な思いが胸に去来する。近しい人を突然亡くしたとき、人はいかなる喪失感を胸に抱くものなのか。そして、そのような人々がうちに秘めた物語に寄り添い、書き留めるとはどのようなことなのか――。

     本書はノンフィクション作家の奥野修司氏が、東日本大震災の被災地で聞き続けた〈「亡き人との再会」ともいえる体験〉をひと連なりの旅のように描いた作品である。

     副題に「霊体験」とある。あの震災以来、被災地ではそうとしか呼べないような、多くの不思議な体験が語られてきた。津波で流された夫に夢の中で抱きしめられ、ぬくもりをたしかに感じたと語る妻。失った子供のオモチャが動いたと話す両親。鳴らないはずの携帯に残された着信……。

     何かの偶然や錯覚、あるいはリアルな夢だったのかもしれない。だが、著者は一人ひとりに繰り返し話を聞き、遺族が語る物語と、語られることによる物語の変容に耳を傾けていく。

     ある日、不思議な体験をした人が、夢を見始めるというエピソードが目立つ。彼らの多くは「私はあなたの近くにいる」という死者からのメッセージを夢の中で受け取り、自らが〈納得できる物語〉を模索し始める。

     その過程を通じて著者が描き出すのは、それらの「物語」がある人々にとって、「いま・ここ」で生き続けるためにどうしても必要なものであったということだ。

     そうすることで悲しみが癒されるわけではない。しかし、そこには深い悲しみを悲しみのままに受容し、唐突に切れてしまった人との物語を、どうにかして紡ぎ直そうとした人々の懸命な姿がある。その言葉に静かに寄り添った著者の眼差まなざしは優しく、真摯しんしだった。

     ◇おくの・しゅうじ=1948年大阪府生まれ。2006年、『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で大宅賞。

     新潮社 1400円

    2017年04月17日 05時26分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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