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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・清水克行(日本史学者・明治大教授)

    『京都のおねだん』 大野裕之著

     「“舞妓まいこさんと遊ぶ”おいくら?」。そんなオビのあおり文句と書名から、京都のセレブなお店の料金設定を暴露した下世話なガイド本と思ってはいけない。本書の主題は、むしろその逆。金銭換算不可能な京都の価値を語った本と言えるだろう。

     著者は、花街で自腹を切って茶屋遊びの「おねだん」を探究する。ところが、その「おねだん」は、実際には後日の請求書で判明する。すると、その支払いに行ったついでに、また一杯。そしてまた請求書が……と、店と客の支払いをめぐる関係は半永久的に続く。おのずから「おねだん」も、その信頼関係に応じて推移していく。請求書に示された「おねだん」は、いわば客自身の価値だったのだ。

     著者のユーモアあふれる筆致は、そんな京都の懐の深さを数々のエピソードから浮かび上がらせる。レンタル料とは別に「月謝」を徴収し、客に視聴目標まで指定するレンタルビデオ店や、なん人も決してしゃべることの許されない名曲喫茶など。魔都の店々のたたずまいは、「顧客」や「価格」の概念の根本すら揺るがす破壊力に満ちている!

     講談社現代新書 800円

    2017年05月15日 05時21分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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