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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・青山七恵(作家)

    『マーヤの自分改造計画』 マーヤ・ヴァン・ウァーグネン著

    内気な少女が殻破る

     「どうしたら人気者になれるだろう?」

     子ども時代、誰しも一度くらいは漠然とした「人気者」の存在に憧れたものではないだろうか。アメリカテキサス州に暮らす13歳の少女マーヤ・ヴァン・ウァーグネンもその一人だ。彼女が通う中学校の人気ランキングで上位を占めるのは、バレーボール部やフットボール部に所属する体育会系の男女。対して外見もパッとせずギーク(いわゆるオタク)のマーヤは、彼女の自己分析によるとランキング圏外の「社会的はみだし者」らしい。

     本書はそんなマーヤが一念発起して「人気者」を目指し奮闘した一年の記録日記である。お手本にしたのは父親の書斎で見つけた『ベティ・コーネルのティーンのための人気者ガイドブック』。1950年代に書かれた、やや古めかしいティーン向けの自己啓発本だ。本のアドバイスに従って外見や性格の改革に乗り出したマーヤは、一年かけて内気な自分の殻を破っていく。

     素直でユーモアあふれる文体でつづられる日記からは、彼女の変身ぶりはもちろん、メキシコとの国境地帯に暮らすアメリカの子どもたちの特殊な状況もうかがえる。学校では頻繁に麻薬捜査や非常時のための封鎖訓練が行われ、武器の持ち込みにつながらないよう廊下のロッカーは使用禁止。日本の学校では考えられないような緊迫感漂う日常を生きながら、マーヤはタフに13歳の自己改革に全情熱をささげる。いくつかの失敗や挫折を乗り越えてようやくたどり着いた「人気者」の定義は、晴れやかで清々すがすがしい。それは「人気者」という言葉の意味を超えて、彼女がこれから他者とどう関わって生きるかを世界に示す力強いマニフェストでもあるのだ。

     読んでいるあいだは「マーヤ頑張れ!」だった心の声が、いつしか「私も頑張れ!」になっている。胸を張って我が道をゆくマーヤに倣って背筋をピンと伸ばしてみれば、窓の外の新緑もいっそうまぶしい。代田亜香子訳。

     ◇Maya Van Wagenen=米国の高校生。米タイム誌の2013年「最も影響力のあるティーン」ベスト16に。

     紀伊国屋書店 1700円

    2017年05月15日 05時27分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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