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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・塚谷裕一(植物学者・東京大教授)

    『アジサイはなぜ葉にアルミ毒をためるのか』 渡辺一夫著

     表題からは、よくある園芸趣味家向け小ネタ集かと思い、素通りするところだった。アジサイ、アルミとくれば、アルミで赤い花色が青くなるというような、耳にタコの話を連想させるからだ。

     しかしページをめくって読んでみるとさにあらず。自然環境下で生き延びようとする樹木についての物語だった。しかも手垢てあかのついた話題はほとんどなく、他の生物との競争や寄生など、新鮮な内容ばかりで、ディープな自然愛好家も楽しめる内容となっている。たしかに副題はそれを示唆しているし、前書きによれば本書は「樹木の個性と生き残り戦略シリーズ」の第三弾だというが、それならばシリーズ名を書名の前面に出した方が良かったと思う。

     一方、選ばれた十九種の中には、庭木や街路樹でも身近な種類も多いため、山歩きをしない街の園芸愛好家も楽しめる内容となっている。都心のあちこちでも目にするマテバシイが、実は国内では九州南部以南が本来の自生地であり、今、関東南部で見られる林は、昔の大規模植林の名残だというような話は、誰にとっても興味深いものだろう。

     築地書館 1800円

    2017年06月19日 05時22分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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