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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・土方正志

    『ハイン 地の果ての祭典』 アン・チャップマン著

     いやはやびっくり、二〇世紀初頭のドイツの人類学者による南米最南端フエゴ島セルクナム族の祭典「ハイン」の記録が、米人類学者の手によって、いま私たちのもとに届く、その経緯もドラマだが、なにせ写真がスゴい。円谷つぶらやプロの宇宙人か怪獣か、はたまた「仮面ライダー」の怪人か、一見、不気味でグロテスク、禍々まがまがしくもある精霊にふんしたセルクナムたちがずらりと収まっている。

     だが、彼らが絶滅に至る過酷と悲惨を読み進み、祭典の意味を知れば、その姿がかなしくてやがてなつかしく、そしてキュートでチャーミングにさえ見えてくる。宇宙人や怪人たちを愛する私たちは彼らと実はどこか似通っているのではないか、なにかが通底しているのではないか。

     奇抜な扮装はないが、撮影者にアッカンベーする男の写真が私は好きだ。茶目ちゃめっ気あふれる時空を超えたアッカンベーは、確かに私たちに向けられている。大川豪司訳。

     新評論 3000円

    2017年06月19日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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