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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・服部文祥(登山家・作家)

    『メコンを下る』 北村昌之著

     1994年9月。東京農大探検部OBを中心とする日中合同の探検隊は、チベット高原を源としてアジア6カ国を流れ、南シナ海に流れ込むメコン川の「源頭」を発見した。

     ヒマラヤを源とする大河川のいくつかは、20世紀末にはまだ、上流から源流部が明らかにされていなかったのだ。

     源頭の発見以降、世界の探検家の目はメコン川全流域初降下に向けられていく。本書はそんなメコン川の探検的開拓期に、源頭発見から全流域降下まで、日本隊の中心人物としてすべての探検を率いた探検家の報告である。

     大河の川下りにはさまざまなハードルがある。氷河水を集めた激流はもちろん、物資の輸送、資金集めなど。メコン上流域の最大のネックは中国の外国人未開放地区入域許可だった。これら難題を、メンバーとの絆、中国側隊員の人徳、緻密な調査、現場での大胆な行動など、人間力で乗り越えていく。信頼できる仲間とともにつづく探検はやがて、時空間を贅沢ぜいたくに費やした川旅へと変わっていく。

     11年かけた5回の探検報告は600ページ。だが全編気持ちのいい活劇で飽きさせない。

     めこん、5500円

    2017年07月24日 05時22分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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