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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・三浦瑠麗(国際政治学者・東京大講師)

    『「いる」じゃん』 くどうなおこ作 松本大洋絵

     絵本は子供のもののようでいて、大人にも必要なもの。晴れた日のニホン。誰もがくぐり抜けた子供時代に、道端で拾った木の実。見上げた太陽。おでこを近づけて見た、カタツムリ。

     くどうさんのつぶやきは早口で飛び出したかと思うと今度はぽつぽつと自在。

     めくるたび現れる絵は、主人公の子供が見た世界。それでいて、どこかしら子供の後ろをついて歩く親がその躍動を見ているときの心象風景のようでもある。

     ぽんぽんとしたくどうさんの言葉はちょっと格好良くて、「ああ、男の子のお母さんだな」と私などは感じる。そこに漫画家の息子さんが「絵」を付けていくって、なんて素敵なのだろう。

     二人の個性の組み合わせが、異なる人と人とが、隣に「いる」感を醸し出す。

     一人の人間でいることの寂しさ、ほら隣に「いる」じゃん、というたのしさが、こころにみてゆく。(スイッチ・パブリッシング、1600円)

    2017年08月07日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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