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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・宮部みゆき(作家)

    『駅弁掛紙の旅』 泉和夫著

     駅弁の掛紙とは、お弁当の入った箱や折を包んでいる紙のことだ。品名や店名が印刷され、カラー刷りでイラストがついている。この掛紙が、通信や情報網が発達していなかった時代には広告媒体や名所案内となっており、ご意見を伺う通信票の役割も担っていたのだという。

     著者は掛紙に魅せられて、中学時代から収集を続けてきたのだそうだ。うれしいカラー版の本書のなかで紹介される数々の美麗なコレクションを見ていると、今まで弁当ガラを包んでさっさと捨ててきた数々の掛紙に、なんて申し訳なくもったいないことをしてきたのだろうと思う。鉄道の歴史が時代を映すのならば、駅弁掛紙にも時代の証言者たる資格は充分にあり、著者のコレクションは明治から昭和の風俗考証の資料としても貴重だ。それに、とにかくもう美味おいしそう!

     この交通新聞社新書には本書の他にも、旅好き・乗り物好きの人には便利で楽しく、私みたいな出不精の「旅した気分になりたい」願望も満たしてくれる既刊本が数々ある。夏休みの旅行プランの参考にもなりますよ。(交通新聞社新書、900円)

    2017年08月07日 05時23分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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