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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・土方正志(出版社「荒蝦夷」代表)

    『ミッドナイト・アサシン』 スキップ・ホランズワース著

     米国史に埋もれた連続殺人事件を追った犯罪ノンフィクションの逸品である。一八八四年一二月三一日、ワイルド・ウエストの面影を残すテキサス州都オースティン。馬と馬車が通りを行く町で黒人女性が殺害される。黒人女性への凶行が五件続いて、やがて白人女性二人が犠牲となる。黒人たちは町を逃げ出し、白人たちは武装する。

     どこか西部劇の保安官じみた警察官たちが不審人物を次々と拘束尋問、犯人逮捕に懸賞金が約束されて、全米の新聞を「ミッドナイト・アサシン(真夜中の暗殺者)」がにぎわせる。人口およそ二万の町は大混乱、パニックの気配まで漂うが、犯行はぴたりと止まる。疑心暗鬼の住民をおびやかしながら、犯人は姿を消す。「切り裂きジャック」の出現で、疑心暗鬼は大西洋を越えた。犯行手口から同一犯が海を渡ったかと大西洋の両岸が色めき立ったが、ジャックもまた闇に消えた。

     未解決事件である。犯人は逃げおおせた。その事実こそが、私たちの胸をざわめかせる。殺人鬼への恐怖が都市計画にまで影響を与えたとの指摘も興味深い。松田和也訳。(二見書房、2500円)

    2017年09月11日 05時21分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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