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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・柳川範之(経済学者・東京大教授)

    『機械脳の時代』 加藤エルテス聡志著

    やっぱり人間が必要だ

     最近では、人工知能が我々の生活を大きく変えてしまうのではないかという話が盛んで、新聞や雑誌を開いても、人工知能という言葉を目にしない日がない位だ。しかし、今現在、人工知能、機械学習、データサイエンスといったものに何ができ、どんな使われ方をしているのかを紹介しているものは意外と少ない。

     機械脳というタイトルは、どちらかというとSF的な世界を連想させるが、実は、そんな現実で起きていることを丁寧に解説してくれているのが本書だ。

     顔認識技術を実際にビジネスに応用している例や、購入予測やおススメの精度をあげる工夫の例など、具体的な企業名を挙げたケーススタディーを用いながら、実際のビジネスでどんな使われ方がされているのかが、語られている。

     そこからみえてくるのは、どちらかといえば、とても手間のかかる、やや融通のきかない機械としての人工知能の姿だ。

     まず目的を明確にして、どんなデータを扱うか決めないと、人工知能やコンピュータを有効活用することは難しい。そして、実際に機能を発揮させるためには、関係各所との交渉や合意形成の努力を、人間が泥臭くしないといけない等のことが、具体的に説明されている。

     もちろん、うまく機能させれば大きな力になるのは事実だろう。著者が強調しているように、「考える」という根本的な作業分野で、人と機械の役割分担に地殻変動が起きている。この本でも、重要なテーマとして、そのような大きな変化が生じていることも示されている。また、もしかすると将来には、もっと違った変化が生じるのかもしれない。

     しかし、そうであっても、人工知能が何でもやれるようになるという論調が多い中、うまく機能させるためには、人工知能のために汗をかく人間や、社内で交渉に走り回る人間が必要だという解説には、何となくほっとする人も少なくないだろう。

     ◇かとう・えるてす・さとし=コンサルタント会社などを経て、日本データサイエンス研究所を創設、代表理事に。

     ダイヤモンド社 1800円

    2017年09月11日 05時22分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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