文字サイズ
    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    服部文祥(登山家・作家)

    『息子が殺人犯になった』 スー・クレボルド著

     一本の電話で、息子の高校で銃撃事件が起きていることを知る。しかも、撃っている当人が息子らしい。混乱驚嘆後悔懺悔ざんげ。平和で満ち足りていたはずの人生が一転、大量殺人犯の親になる。

     著者は考える。被害者の家族はもちろん、ニュースを聞いた第三者も「いったい親はなにをやっていたのだ」と思うだろう。

     だがこれまでの家族愛や自分の母親としてのあり方を間違えていたとは思えない。自分は善良な市民で、幸せな家庭をもち、よい母であろうと日々努力してきた。多少の問題はあったものの、息子との関係も良好で平均よりもはるかに親密な家族だったはずだ。

     この疑問をさらにもう一歩踏み込んで、本書は手記からノンフィクションになる。もしかして、自分が繊細で愛情深く、傷つき悩む人がいたら、すぐに気がついて守ることができる、そう思っていたことそのものが大きな落とし穴だったのではないのか……。

     深く愛し、理解しているつもりの肉親でも、本当のところはわからない。著者はその証拠として自分自身を提示している。仁木めぐみ訳。

     亜紀書房 2300円

    2017年10月02日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大手町モールのおすすめ
    帆布鞄
    リンク