文字サイズ
    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・奈良岡聰智(政治史学者・京都大教授)

    『分裂と統合の日本政治』 砂原庸介著

    政党システム、不安定に

     近年の日本政治の顕著な特徴の一つとして、大都市圏における地域政党の台頭が挙げられる。「大阪維新の会」「都民ファーストの会」の躍進は、都市部の政治を間違いなく活性化した。しかし、その一方で、国政政党の都市部に対する影響力が衰え、政党システムは不安定化している。本書は、このような状況がなぜ、どのようにして生じたのかを鋭く分析している。

     一九九四年の小選挙区制の導入以降、中央政界では自民党の一党優位が崩れ、二大政党化が進んだ。しかし民主党は、国政レベルで勢力を伸ばしたものの、地方議会では確固たる支持基盤を確立できなかった。自民党は、農村部で圧倒的な強さを維持したが、都市部では脆弱ぜいじゃくであった。そうした中で、地方分権改革により強い権限を獲得した首長が、地方レベルの政策決定過程で影響力を増し、地方議会では首長を支持する地域政党が伸張した。このように、一九九〇年代以降の統治機構改革には、国政政党による政治統合を損なう面があったというのが、本書の見立てである。

     地方選挙について仔細しさいに見ると、中選挙区制が採用されている政令指定都市では、激しい政党間競争が行われている。その他の市町村では、選挙区定数が非常に大きい大選挙区制が採用されているため、政党単位での競争が生まれにくく、無所属議員が大量に当選している。著者は、こうした状況が政党システムの機能不全につながっているとして、地方議会の選挙制度改革が必要だと主張している。具体的には、比例代表制の導入を提唱し、首長と議員を別々に選ぶ二元代表制の再検討も考慮すべきだとしている。

     「地方から国政を変える」というスローガンは俗耳に入りやすいが、実現は容易ではない。本書の分析は、状況の改善のためには、国政と地方政治の関係性を再構築する必要があることを示している。具体策については異論もあるだろうが、傾聴に値する提言ではないだろうか。

     ◇すなはら・ようすけ=1978年大阪府生まれ。神戸大教授。著書に『民主主義の条件』『大阪』など。

     千倉書房 3600円

    2017年10月09日 05時27分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大手町モールのおすすめ
    帆布鞄
    リンク