<速報> 自民、絶対安定多数を確保…衆院選
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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・三浦瑠麗(国際政治学者・東京大講師)

    『「米中経済戦争」の内実を読み解く』 津上俊哉著

    中国の実像と課題示す

     日本では、中国経済悲観論がおなかいっぱいに提供されてきた。著者は、そのせいで現実の中国経済への関心が低下しすぎていると警鐘を鳴らす。中国経済のありのままの実力と課題を将来にわたって示した本だ。

     本書は著者がトランプ旋風吹き荒れるアメリカに滞在した感想から始まる。経済は絶好調なのに、国民が自信なく内向きになるという残念さ。しかし、著者は観察するうちにアメリカ社会の根深い亀裂に気付く。

     民主主義が自由主義や資本主義とどうやってうまくやっていくのかという永遠の課題が、再び問われているわけだ。民主主義が資本主義に深く絶望し、忍び寄る何らかの脅威が強い恐怖をもたらすとき、社会には全体主義の種がかれる。そんなとき、何事も民主的に折り合いを付けなければならない各国は、中国を羨ましがったりすることがある。

     だが、この本からうかがえる中国の姿は、ときに不思議なほど日本に似ている。改革の先送りによって未来を犠牲にしているところ。少子高齢化が待ち受ける将来の構造的課題。アメリカは外交で中国を特別視し、存在感を買いかぶったりすることがままある。けれども、本書が一つ一つ丁寧に説明しているように、中国政府にはできることとできないことがあるし、外交に関しても、そもそもが冷徹なリアリズムに基づき国益を追求しているに過ぎないのだ。

     けれども、中国がほかの国と決定的に違うのは、国家が強く経済に関与する国だということ。また、そんな国で、党内権力抗争が指導者のエネルギーと目的のほとんどを奪ってしまうこと。中国の「借りすぎ経済」が生み出した投資バブルが破たんを引き起こさないように国家が支えるという危険な構造がそこにある。過剰な経済上の期待を国家権力が背負ってしまうことにそもそもの問題があるわけだ。

     新書のコンパクトさの中に広がる視界の広さ、提言の勘所など、どれをとってもお勧めしたい本である。

     ◇つがみ・としや=1957年生まれ。現代中国研究家。著書に『中国台頭』(サントリー学芸賞)など。

     PHP新書 860円

    2017年10月09日 05時23分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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