文字サイズ
    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    三浦瑠麗(国際政治学者・東京大講師)

    『子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法』 ジャンシー・ダン著

    正直、ユーモラスな本音

     タイトルが衝撃的だ。いつかこんな日が来ると思っていた。子育て最後のタブーと帯に銘打っているが、その通り、数ある問題解決の本には書かれていないホンネが正直に、しかもユーモラスに描かれている。

     実際のところ、子供ができてから夫に激しい怒りを覚えて仕方がないという相談を、私は結構しょっちゅう耳にする。外では仲良い夫婦をやっていても、家に帰ると沈黙が支配したり、刺々とげとげしい言葉の応酬になったり。憎しみの域に到達することもあるだろう。そんな悩みを抱えている方にはぜひこの本をお勧めしたい。

     本書が分かりやすく教えてくれるように、そうなってしまう原因は双方にある。そもそも違う思考様式を取り、物事の感じ方も違う男女が子育てという急激な負荷の増大と環境変化に直面するとき、いままでの夫婦間の問題解決の方法では間に合わなくなってしまうのだ。

     この問題が地下に潜ってきた理由には、夫を憎むという感情が妻の側にもなじみのない突発的なもので、訳が分からないということがあるだろう。分からないがゆえに、マグマのようにめてくすぶらせてしまうわけだ。

     争いの種を一つ一つ解決し、意思疎通の仕方を覚え、子供に手伝わせ完璧を求めず、ふれあいや夫婦生活を回復すること。ジャンシーさんはお茶目ちゃめに様々なアドバイスをくれる。

     中でも、女性におすすめしたいのは彼女の言うところの「でっち上げた物語」を信じ込んでしがみつくのをやめること。大変な思いをしている妻は、黙っていてもわかるだろうと夫に過剰な期待をする。でも、そもそも分かるわけがないのだ。相手に悪意はないのかもしれないということに気づかなければいけない。

     男性は、タイトルで尻込みするのはもったいないとだけ書いておきたい。子供が大きくなれば、また二人きり。それは、どの夫婦をも待ち受けている真実なのだから。村井理子訳。

     ◇Jancee Dunn=1966年米生まれ。作家。著書に『トゥルー・カラーズ――シンディ・ローパー自伝』など。

     太田出版 1800円

    2017年10月30日 05時28分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大手町モールのおすすめ
    帆布鞄
    リンク