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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    苅部直(政治学者・東京大教授)

    『オーケストラ解体新書』 読売日本交響楽団編

     クラシック音楽の放送番組が、ラジオでもテレビでも少なくなった。常々そう思っていたが、この本によれば読売日本交響楽団が創立十周年を迎えた一九七二年に、すでに同じことが指摘されていた。

     もともとオーケストラの経営資金は演奏会の収入だけでは足りず、民間と国・自治体からの支援に大きく依存してきた。近年は聴衆の高齢化も進んでいる。

     しかし困難な状況のなかで日本のオーケストラは、ここ二十年ほど技術の水準を大きく上げてきた。いまや海外の人気指揮者が、日本での仕事を進んで引きうけるようになっているという。

     「読響」でその活躍を支えてきた楽団員と事務方の声を拾い集めた本である。海外公演の段取りや楽譜の入手など、聴衆に見えないところで、計算が緻密ちみつにめぐらされていることがよくわかる。

     ライブの演奏は一回かぎりのものであるが、その華麗な響きを支えているのは、多くの人々の地道な仕事の積み重ねである。そのことを意識して演奏会に足を運ぶなら、名演がもたらす感動も、いっそう深まるに違いない。

     中央公論新社 1400円

    2017年10月30日 05時22分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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