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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・土方正志(出版社「荒蝦夷」代表)

    『出羽三山 山岳信仰の歴史を歩く』 岩鼻通明著

     山形県、出羽三山。月山がっさん・羽黒山・湯殿山ゆどのさんの三山からなる信仰の山々だが、なかなかその全貌ぜんぼうが見渡せない。景観的にも標高一九八四メートルの主峰・月山はともかく、羽黒山や湯殿山は奥深い山脈においそれと見分けがたいだけでなく、平安時代から続く修験道、天台宗と真言宗の支配権争い、そして明治の神仏分離によって神道の山へと歴史も複雑に、全体像を概観する入門書がなかなかなかった。本書はその隙間を埋めてくれる好著だ。

     出羽三山史から始まって山伏修行を論じ、江戸時代の絵図を手に山々を歩き、即身仏の謎に触れて、信仰の山ならではの食文化を紹介、信仰と観光の山の未来までがわかりやすく説かれて、副題の通りまさに多角的に「山岳信仰の歴史を歩く」一冊である。これから出羽三山を旅する人たちにとって必携の一冊といっていい。

     読みながら、山形大学教授(文化地理学・宗教民俗学)で出羽三山信仰に関する著作もある著者の、山々の文化と自然へのやさしいまなざしを感じさせられて、さて、しばらくぶりに「お山」に行ってみようか。(岩波新書、900円)

    2017年12月04日 05時21分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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