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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・奈良岡聰智(政治史学者・京都大教授)

    『パレスチナ現代史 岩のドームの郵便学』 内藤陽介著

    • パレスチナ自治政府の切手。岩のドームが描かれている
      パレスチナ自治政府の切手。岩のドームが描かれている

     エルサレムはイスラエルの領域内にあるが、旧市街は、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の聖地とされている。この中で、イスラム教の聖地であることの象徴として佇立ちょりつし続けてきた「岩のドーム」は、ムスリムの管理下にあり、世界中のムスリムから憧憬の場所とみなされてきた。

     イスラム諸国は、このドームを盛んに切手のデザインに採用してきた。本書はその変遷をたどることで、パレスチナ問題の複雑さを読み解いている。マニアックな書だと思われるかもしれないが、さにあらず。切手のデザインや発行時期の分析から、イスラエルとアラブ諸国の対立の変遷、反イスラエル陣営の多様性などが鮮やかに浮かび上がる。

     郵便の存在感が低下して久しいが、著者はえて「郵便学」を標榜ひょうぼうし、「国家のメディア」である切手を通して時代を洞察している。心意気が伝わってくる快作だ。(えにし書房、2500円)

    2017年12月04日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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