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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・柳川範之(経済学者・東京大教授)

    『起業の科学 スタートアップサイエンス』 田所雅之著

    一つの選択肢として

     起業と聞いて、どんな印象をもたれるだろう。自分から会社を起こすなんて、どこかの特別な人がやること、とお考えになるだろうか。

     確かに昔は、そうだったかもしれない。しかし今や起業のハードルは大きく下がり、誰にでもそのチャンスがある。何よりこれからは、人生100年と言われる時代だ。(実際にやるかどうかを別にして)起業を一つの選択肢として考えられるようにしておくことは、何歳になっても、いや、ある程度経験を積んだ人にこそ、必要なことだろう。

     ただし、そうは言っても、何をどうすれば、起業ができるのか、ほとんどの人にとってかなり遠く雲をつかむような話なことも事実。

     その状況を大きく改善してくれるのが、本書だ。何をどう考え、具体的に何をしていけば起業が可能になるのか、どこにリスクや落とし穴があるのか、具体的なステップごとに懇切丁寧に解説がされている。

     たとえば最初は、アイデアを出すところから説明が始まる。誰が聞いても良いアイデアをスタートアップ(起業初期)の段階では選ぶべきではないといった印象的な示唆や、避けるべきアイデアとはどんなものか等が示される。

     そして、製品やサービスのプロトタイプ(試供品)を作成して、それをどう検証し改善していくか等も語られ、さらに後半では会社を大きくしていく際には何を考えれば良いのか、ユーザーを定着させるためのポイント等についても具体的事例を用いて解説されている。

     著者は実際にシリコンバレーで起業しているし、内外で多数のスタートアップ企業の評価やアドバイスをしているだけあって、内容は具体的だ。また、多数のスライドも効果的に用いられている。

     多くの読者が本書を通じて、どうしたら科学的に起業できるかを学べば、日本の未来は変わるのではないか、そんな気にさえさせてくれる。

     ◇たどころ・まさゆき=1978年生まれ。ウェブマーケティング会社新規事業担当CSO(最高戦略責任者)など。

     日経BP社 2300円

    2017年12月25日 05時25分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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