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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・三浦瑠麗(国際政治学者・東京大講師)

    『軍人が政治家になってはいけない本当の理由』 廣中雅之著

     日本では、シビリアン・コントロールは「文民が軍人を統制する」ただそれだけの意味だとされている。「軍をもたない」ことを誇りとする一方で、軍保有に伴う覚悟なしに自衛隊をもつことは、むしろ危険すら伴う。本書は、冒頭で政軍関係という用語が日本に定着していないことを指摘している。自衛隊を実戦使用しないのであれば考える必要がないとされてきたからだと。

     著者は制服を脱いだ元空将。米英で改めて政軍関係の理論と現実を学んだ。そこから何周回分も遅れた問題意識にとどまっている日本に、現代的な議論を導入しようとする試みは評価したい。

     しかし、同時に注意すべきは、冷戦後の米国の政軍関係にはかなりの摩擦が生じており、確立した政軍関係理論というものが成立しているとは思わない方が良いということだ。政軍関係という分野すら国際政治や内政と切り離して論じられなくなっている。

     自衛官が軍人としての責任と自制を醸成するにあたって、本書は資するところ大だろう。しかし日本の課題は自衛隊だけでなく政治社会にある。道のりはぼうとして遠い。

     文春新書 860円

    2017年12月25日 05時22分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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