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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・朝井リョウ(作家)

    『働く、働かない、働けば』 巳年キリン著

     派遣社員かつ工場勤務の著者が、様々な人との対話を通し、働くことと生きることの両立について思考する。

     近年、情報過多ゆえの効率主義から、短期的に結果が出るものが重要視される風潮が強まっている印象がある。労働でいえば、今つらくても明日の利益のために休めないという状況だ。作中、転職予定のヘルパーが提案した『その人のペースで、離れる期間を挟みながら関わる』働き方に、私も一票投じたい。私たちは働くために生きているのではなく、生きるために働いている。長期的に物事を捉えにくい今、私たちは、時に少し休み、一歩立ち止まったほうが“働く”より長い“生きる”時間を豊かに過ごせることに気づきにくくなっている。

     テーマも内容も重いが、愛らしい絵と身近な言葉でのやりとりに親近感が湧き、読みながら仲間が一人二人と増えていく感覚を抱く。仲間がいるという感覚は、生活保護費の減額検討など自己責任論が強まる現代において、明日すぐ効く薬にはならなくとも長く心身を支えるお守りとなる。私を含め、最終章に励まされる読者はとても多いだろう。

     三一書房 1300円

    2018年01月22日 05時22分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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