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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・森健(ジャーナリスト)

    『日米地位協定』 明田川融著

     昨秋、沖縄県東村高江で起きた米軍ヘリの炎上事故。現場では米軍が立ち入りを規制していた。県警の捜査を阻んだのが日米地位協定だった。

     本書は協定の成立から現在に至る経緯と背景を日米の公文書などから解き明かした。

     驚くのは成立時期からの日本の姿勢だ。サンフランシスコ講和条約を前にマッカーサー最高司令官は日本全土を自由に米軍の基地化できる案を提示。すると、吉田茂首相は安全保障に関して「米国との協力によって確保」することを「希望」と前向きに評価。前身の協定が締結された。

     問題は日本が米軍の駐留を「希望」しているという論理を米国が重視したことだ。結果、「応分の貢献」「思いやり予算」と日本が費用負担をする論拠が重ねられた。また米軍人が起こす事故も大半で「処分なし」とされてきた。

     少女暴行事件のあった1995年には公訴前身柄引き渡しで運用改善、2015年に環境保全で補足協定など改善が図られた。だが、それで十分かと言えば、そうではないだろう。主権と安全保障、日米関係とはいかなるものか、考えさせられる。(みすず書房、3600円)

    2018年01月29日 05時22分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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