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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・服部文祥(登山家・作家)

    『ローカリズム宣言』 内田樹著

     インフラはほぼ整備され、開発すべき土地もなく、人口も減り続け、経済活動が活性化する要素は存在しない。これは現代日本社会の「問題」ではなく、「答え」である。資本主義経済と化石燃料文明は到達点を迎え、人類は次なる段階に入ろうとしている。

     こんなことちょっと立ち止まって考えれば、自明に思えるが、それをふまえた発言をする政治家は皆無である。それは有権者の大多数がまだ、昨日と変わらない明日を求めているからなのか。

     「ローカリズム」とは資本主義経済の終焉しゅうえんを受け入れて、自分たちのあり方を考えようという提案であり、若者を中心に実際に動き出しつつあるローカル化の流れを指している。

     グローバル化への疑問や教育政策の失敗は、我々一人一人がその一要素であるだけに実感があり、ちょっと強引な理屈も、著者の広い知見と滑らかな話術で響いてくる。

     治安や公共衛生や基礎医療を維持したまま、著者が言う「定常モデル」に軟着陸するためには、考え、自分の手足を動かし、知と生身の身体を融合させる必要がある。(デコ、1600円)

    2018年01月29日 05時21分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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