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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・三浦瑠麗(国際政治学者・東京大講師)

    『憲法で読むアメリカ現代史』 阿川尚之著

    最高裁と大統領の攻防

     トランプ大統領のもと、ゴーサッチ氏が最高裁判事に任命された。2016年の2月、大統領選の予備選の山場、スーパーチューズデーを約2週間後に控えたスカリア判事の急死を受け、オバマ政権下でまとまらなかった新判事の任命を、新しく就任したトランプ大統領が実現させたものだ。ゴーサッチ氏自身は良識的で骨のあるエリートだが、民主党はそれでも抵抗するなどして指名承認のプロセスは政治化した。

     アメリカにおける最高裁の存在感は、日本からはなかなか理解しがたいものがあるだろう。時に大統領に対峙たいじし、議会や地方政府の決断をひっくり返す力を持つ最高裁の矜持きょうじは、アメリカにおける三権分立の確かさを守る重要な一角である。

     大統領の指名と議会承認のプロセスが高度に政治化してしまうのは、政治から独立している最高裁の持つ力の大きさゆえであると言えよう。

     著者の阿川氏は、レーガン期からトランプ政権発足後ゴーサッチ判事の指名承認までのアメリカ史を、最高裁と大統領との攻防を通じてわかりやすく生き生きと描き出している。

     最高裁で争われてきた憲法解釈をめぐる立場の違いは、そのままアメリカ政治における保守とリベラルの価値観の分断と重なっている。その中心的なテーマの一つが、中絶を容認するか、もしそうならばどこまで容認するか、ということであった。これは「プロ・ライフ」=命を守る立場に立つか、「プロ・チョイス」=女性の選択の権利を守るか、の違いだ。日本のような国が温情主義的に例外的事例として中絶を認めてきたのに対し、アメリカは社会が左右に分かれて争い、共に真摯しんしな主張をぶつけ合ってきた。

     アメリカを理解する上では、このような社会の特性に即してみていく必要がある。それは、強い大統領をいだきつつも、憲法観や社会観が不断にせめぎあうアメリカ社会の姿そのものだ。

     ◇あがわ・なおゆき=1951年生まれ。同志社大特別客員教授。著書に『憲法で読むアメリカ史』など。

     NTT出版 2500円

    2018年02月05日 05時25分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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