<速報> レアル・マドリードが3連覇…欧州CL
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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・三浦瑠麗(国際政治学者・東京大講師)

    『移民の政治経済学』 ジョージ・ボージャス著

    イデオロギー抜きで

     移民問題は、ここ数年米欧を揺るがす政治問題である。建設的な議論にならないのは、移民の社会への定着やコントロールをめぐる言説が、国内のイデオロギー闘争を反映しており、その争いに巻き込まれずに論争に加わることがほぼ不可能であるから、ということがある。

     本書は、移民をめぐる政治経済問題をイデオロギー抜きで論じ、検証することを目指している。その試み自体が政治的なタブーを打ち破るものであることは間違いない。移民受け入れは「我々全員にとって良いこと」という前提をおくのではなく、経済効果や社会保障への影響など、コストとベネフィットの観点から幅広く検証していくという態度を本書はとっている。

     自身キューバ系移民である著者は、1980年代の研究で移民の経済格差に着目。初期の移民が後期の移民より収入が高いのは、その国への経済的な同化が進んだからではなく、初期移民には高技能の労働者が多かったからだと結論付けた。しかし、そうした科学的知見に対して寄せられたのは、反移民的な発言の根拠となりうる内容はなかったにもかかわらず、データが「排外主義者に利用されかねない」とする研究者コミュニティーの警告であったという。著者は議論を封じようとする学界に批判的だ。単に移民を労働力として見るのではなく、むしろ生身の人間であることに着目し、研究者として誠実な態度を保ってきた。

     先進国が移民規制を完全撤廃すれば、世界全体の富は飛躍的に増え、南北格差はなくなる。しかし、その過程で56億人が南から北へ移住することになる、という。すごい数字だ。それに伴う影響やコストはいかほどか。

     結局、移民問題がこじれているのは、排外主義者の存在に加え、移民の受け入れコストが十分議論されてこなかったからではないのか。その問いかけは重い。岩本正明訳。

     ◇George J.Borjas=1950年生まれ。米ハーバード・ケネディスクール教授。2011年、IZA賞を受賞。

     白水社 2200円

    2018年03月05日 05時25分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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