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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・本郷恵子(中世史学者・東京大教授)

    『猫だって……。』 佐竹茉莉子著

     雨の日、雪の日、ひどく暑い日や寒い日も、私は猫に話しかける。「おうちがあってよかったねえ。お外の猫はたいへんだよ」。のびのび寝ているわが家の猫は、過去に野良生活をしていたことを、覚えているのかいないのか。

     過酷なお外での暮らしを経て、暖かいおうちと家族を得た猫たちが「猫だっていろいろあるのよ」と、それぞれの半生を語った22の物語。ひとりぼっちで湿った落ち葉の上にうずくまっていたモコちゃん、靴の空箱に入れて捨てられたニケ君、病気のお兄ちゃんの願いで迎えられたしずかちゃん。リオ君はものすごい疥癬かいせんを患っていて、保護された当初は目も開かないほどだった。優しくしてもらって、治療してもらって、全然ちがう猫みたいにふくふくになって、もう涙なしには読めません。障害がのこってしまった猫も多いけれど、どの子の額にも愛されているしるしが見える。よかったね、みんなほんとによかったね。

     「猫だって」ではなくて「猫だから」こそ幸せになってほしい。猫と暮らすニンゲンはその10倍も100倍も幸せをもらえるのだから。

     辰巳出版、1200円

    2018年03月12日 05時21分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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