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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・土方正志(出版社「荒蝦夷」代表)

    『山熊田』 亀山亮著

     新潟県村上市山熊田。山形県との県境、どこまでも山深い集落・山熊田は、集団でクマを狩る巻狩りなど伝統狩猟を守るマタギ=写真=の村だ。その山熊田の四季の営みを土門拳賞写真家が撮り収めた。

     マタギといえばクマ狩りだが、実はそれだけではない。野生動物を雪中に追うのは冬。それ以外の季節は田畑を耕し、焼き畑でカブを育て、清流で川魚をり、シナノキの樹皮でシナ織りを織り上げる。つまりは山熊田のマタギは、自然の恵みを生活の糧とする達人たちなのだ。

     私もよく知る集落である。ここに映し出された暮らしを私もまた見ている。さらに山熊田は作家・熊谷達也の直木賞受賞作『邂逅かいこうの森』など「マタギ三部作」のモデルとなった村でもある。本書の写真に、南北に延びる日本列島の四季の自然の、暮らしの多様性に思いをはせるのもいい。そんな一冊である。

     夕書房 2800円

    2018年04月02日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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