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    読売新聞の読書委員らによる書評のコーナーです。
    評・森健(ジャーナリスト)

    『告白 あるPKO隊員の死・23年目の真実』 旗手啓介著

    元隊員が語る真相

     あの死はなぜ起きたのか――。四半世紀の時を超え、たどり着いたのは過酷な真相だった。

     1993年5月4日、カンボジア北西部、タイ国境に近い辺境の地。国連カンボジア暫定統治機構に派遣され、国連平和維持活動に従事していた日本の文民警察官がある武装勢力に襲撃された。自動小銃やロケット砲の攻撃。4人が重軽傷を負い、岡山県警の高田晴行警部補は命を落とした。PKO参加5原則の一つ「停戦合意の成立」という場所のはずだった。

     政府は高田隊員の死を「しかたない」とし、事件の詳細を公表しなかった。だが、文民警察隊の隊員はそのことに強い憤りを感じていた。

     取材にあたったNHKの著者は元隊員に接触する過程で多くの証言や資料を得る。ビデオや日記には「市街戦そのもの」「戦争だよ戦争」といった言葉が生々しく残されていた。

     現地はジャングルの奥地で、政府の力が及ばず、反政府勢力が三派もいた。司法制度も整備されておらず、現地の警察官は住民を平気で射殺する。偶然にも不在だったことで難を逃れたが、日本人宿舎も砲弾で襲撃された。

     事件が起きたのは、そんな不穏な情勢の中でのことだった。隊員たちは分かれていた班と情報交換するために危険地帯を通過し、その復路で襲撃に出くわした。本書の核はここからだ。取材を進めると、当時同行していたある国の隊員の行動がなければ、高田隊員は撃たれずに済んだ可能性があったことがわかったのだ。

     著者はその外国人隊員のもとを訪れ、真相を尋ねる。そして語られる真相。それは当時の現地の状況を理解しつつも、残念な思いを感じずにはいられない。さらに著者は当時日本隊を襲ったと思われる組織も訪ねていく。

     本取材はNHKスペシャルで放送され、文化庁芸術祭などで高い評価を得た。当時、この派遣を政府が十分に検証することはなかったが、著者が掘り起こした実像はあまりに重い。

     ◇はたて・けいすけ=1979年神奈川県生まれ。2002年NHK入局。15年からNHK大阪放送局報道部所属。

     講談社 1800円

    2018年04月02日 05時27分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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