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    最新刊に関する充実した書評です。

    『東京わが残像 1948―1964』 田沼武能写真集

    • 大人に負けず祭りに熱中する下町少年、浅草、1963年
      大人に負けず祭りに熱中する下町少年、浅草、1963年

     つい、写真の人物たちの視線に目が行く。彼ら、彼女らが何を見ているのか。そこに、昭和の東京を生きる人々の息吹がさりげなく写し取られている。

     世界中の子供たちの表情を切り取った、優しいまなざしの写真で知られる田沼武能さん。現在88歳の大ベテランが写真家として走り出した1948年から、東京五輪を控えて開発ラッシュの64年までの写真を収めたのが本書だ。

     浅草で生まれ育った田沼さんは、古里東京に生きる人たちが、何を喜び、何を欲していたか、寄り添うようにフィルムに焼き付ける。

     上野公園の戦災孤児には生きるたくましさがあふれ、お祭りに熱中する少年は天真らんまん、東京タワーを建設する青年工員は実に誇らしげだ。タイトル通り、全ては今や「残像」だが、彼らの視線の先には、確かに希望があったと感じさせる。この時代を知らない世代が見ても、郷愁を覚えずにいられない。(クレヴィス、2315円)(貴)

    2018年02月19日 05時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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