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    旬の食べ物、お酒や料理にまつわるニュースのコーナーです。

    都会はハチミツの名産地! ~広がる都市養蜂~

     東京・江東区役所がミツバチの飼育に取り組んでいる。ハチミツを地元の名物に、という区職員の発案で、2015年度に始まった。ビルが林立し、ガーデニングブームなどで花がそこそこ多い都会は、実は養蜂には有利な環境だといい、銀座には10年以上前から飼育の拠点が設けられている。今や取り組みのすそ野は首都圏各地に広がり、地域の食育、就労支援といった副産物も生み出している。そんな都市養蜂の最新事情を取材した。(地方部 江藤 一)

    【養蜂とは】
     日本で養蜂が本格的に行われるようになったのは江戸時代以降といわれる。
     ハチミツの量が多く現在の主流となっているセイヨウミツバチは、明治時代に導入された。養豚、養鶏と同じ「畜産」にあたり、養蜂目的でミツバチを飼育するときは、養蜂振興法に基づき、始める年の1月までに都道府県への届け出が必要。農水省によると、国内の飼育規模は2016年1月1日現在、9452戸、21万2000群(1群あたりの個体数は、セイヨウミツバチだと2万~4万匹。増殖するため夏期には2倍以上になる)。

    区役所産 年170キロ

    • 江東区が養蜂に使用している巣箱
      江東区が養蜂に使用している巣箱
    • 江東区防災センター
      江東区防災センター

     江東区の「ハニービー・プロジェクト」の拠点は、区本庁舎隣の防災センター屋上(地上24メートル)。ハチミツの収穫量は、事業スタート時の2015年度は約140キロ・グラム、翌16年度は約170キロ・グラムに増えた。プロジェクト事務局長の速水俊成さん(63)は「区内の学校や保育園の給食に提供したい」と期待を膨らませる。

     速水さんが区役所に勤め始めた1974年頃は、周囲は資材置き場や町工場が目立ち、自然の恵みを感じられるような場所ではなかった。「あれから40年たって、ハチミツがとれるほど緑が豊かになったのか」と速水さんは感慨深げだ。

    • ハチミツの収穫作業(2016年、江東区防災センターで)=江東区提供
      ハチミツの収穫作業(2016年、江東区防災センターで)=江東区提供
    • 採取されたハチミツ(2016年)=江東区提供
      採取されたハチミツ(2016年)=江東区提供

     提案した職員たちは、銀座のビルの屋上で以前から養蜂が行われているのを知っていて、それをヒントに、都市における生態系回復のシンボルとして事業化を思いついたという。柱は、ハチミツを使った特産品作りや環境教育。50グラム入りの瓶詰にして、区役所で販売(完売)したり、記念品として使ったりした。活動には職員とボランティア約40人が参加。製品のハチミツの検査は外部委託し、瓶詰づくりは区内の福祉作業所が担当している。

     区では、養蜂技術を確実に継承し、活動の幅を広げることを目指して、4月以降、事業の実施主体をNPO法人に移管する予定。区としても引き続き主体的に関わっていく考えだ。

    採蜜体験、絵本で食育も

    • 子供たちにハチミツができる過程を説明する宮武理事長(江東みつばちプロジェクト提供)
      子供たちにハチミツができる過程を説明する宮武理事長(江東みつばちプロジェクト提供)
    • 巣箱の内検(江東みつばちプロジェクト提供)
      巣箱の内検(江東みつばちプロジェクト提供)

     江東区内には、別に民間の養蜂拠点がある。新木場の食品輸入・製造会社の「藤屋」屋上(地上24メートル)を利用してミツバチを飼育している江東みつばちプロジェクト(宮武憲行理事長)。2013年に始まり、住民らを集めて採蜜体験会を実施するなど、地域交流を深めている。

     同プロジェクトは、藤屋の社員らがメンバーの一般社団法人。採蜜体験に親子で参加してもらい、ミツバチたちのおかげでハチミツが食べられることを説明したり、区内の環境イベントに出店したりしている。特に力を入れているのが「食育」で、オリジナル絵本「ミツバチとはちみつ」を作成し、地元の幼稚園、保育園、小学校などに寄贈。区の養蜂事業の支援もしており、種蜂や資機材を提供した。

    商店街の名物に

    • 昭和建設の巣箱(昭和建設提供)
      昭和建設の巣箱(昭和建設提供)
    • 昭和建設のお中元用瓶詰
      昭和建設のお中元用瓶詰

     自前でミツバチを飼い、とれたハチミツを地元商店街の名物として提供している企業もある。横浜市保土ヶ谷区の昭和建設(工藤圭亮(けいすけ)社長)。ハチミツは、地元・和田町商店街の産品だという意味を込めて「WANEY(ワニー)」と命名。瓶詰を取引先へのお中元にして、喜ばれている。また、近くにある横浜国大の学生が、WANEYを使ったオリジナルドリンクを考案したり、商店街の祭りに出す屋台の名物・韓国風おやきに使ったりと、同社の養蜂を通じて、地域の輪が広がっている。

     同社の工藤社長は環境問題に関心を抱き、自然のありがたみに感謝しながら地域住民が一体になれる事業として、養蜂を発案。本社屋上(地上約15メートル)を活用して、2010年に始めた。

    【生態と飼育の1年】
     セイヨウミツバチの働きバチの行動半径は半径2キロから4キロ。ただ、糖度の高い花の蜜を見つけると、さらに遠くまで飛んでいくこともある。代表的なえさ場の花はニセアカシア、クローバー、ツツジなど。
    (春から夏 )巣分かれ(ミツバチの集団引っ越し。次ページ参照)の予兆やハチミツの量や病害虫の発生などを確認するため巣箱内を点検する「内検」を行う。蓄えられたハチミツが熟成した段階で取り出す。
    <ハチミツ作りの流れ>
     1 巣箱からハチミツが詰まった板を取り出す
     2 板を遠心分離器に取り付け、手で回す
     3 こすとハチミツになる
    (秋) 天敵のスズメバチに警戒しながら、ミツバチたちの数が減ってくることに合わせ、巣が作られる巣箱内の板の数を減らす。
    (冬) ミツバチたちの暮らす巣箱に保温対策を施す。次のシーズンに備えて、巣箱の修理や掃除も必要。

    都市養蜂広めた銀座

    • 採蜜する田中理事長(2006年)=銀座ミツバチプロジェクト提供
      採蜜する田中理事長(2006年)=銀座ミツバチプロジェクト提供
    • 銀座の屋上でとれたハチミツ(銀座ミツバチプロジェクト提供)
      銀座の屋上でとれたハチミツ(銀座ミツバチプロジェクト提供)

     都市養蜂の草分けは、NPO法人「銀座ミツバチプロジェクト」(田中淳夫理事長)といわれる。紙パルプ会館屋上(中央区銀座3丁目、地上46メートル)を拠点に2006年から活動。岩手県のプロの養蜂家から勧められたことがきっかけという。バーの支配人やパティシエ、老舗の店の若手経営者、弁護士など多彩な顔ぶれの150人が関わる。

     今では飼育場所は銀座の3か所に増え、年間のハチミツ生産量は1トンに上る。周辺のバーやカフェに、それぞれカクテル、スイーツの材料として提供されている。また、カステラ、チョコレート、大福などの和洋菓子に活用され、ハチミツ酵母を用いたビールも誕生した。

    ミツバチの独壇場

     都会のどんな点が養蜂に有利に働くのか。

    • 中村教授
      中村教授

     玉川大ミツバチ科学研究センターの中村純教授は、「都市部では、花をえさ場とする昆虫が少なく、ミツバチがほぼ独占できる」ことを挙げる。

     また、高いビルがたくさんあり、その屋上を飼育場所として活用できることも、見逃せないポイントだ。ミツバチは、スズメバチのような攻撃性はないものの、人を刺す場合があり、近隣で飼育されているのを見て拒否反応を示す住民もいる。人目につかない場所の確保が、飼育を円滑に進める上で重要なのだが、その点、都会のビルの屋上はうってつけというわけだ。

    若者の自立支援にも

    • 養蜂にやりがいを感じるという工藤さん(K2インターナショナルグループ提供)
      養蜂にやりがいを感じるという工藤さん(K2インターナショナルグループ提供)

     若者の就労支援に養蜂を活用している企業がある。K2インターナショナルグループ(横浜市)は、支援対象の若者たちが自社屋上で収穫したハチミツを、直営のカフェの食材として活用している。自然や生き物との付き合い方、仲間との助け合いとその喜びを体感するのに、養蜂はうってつけだと同社は考えている。

     カフェのスタッフは、かつて支援を受けた若者が中心。店長の工藤(さとし)さん(38)は引きこもりを同社の支援で乗り越え、いま養蜂のリーダーを務める。手塩にかけたハチミツを「おいしい」と客にほめられることにやりがいを感じる毎日だ。

    【養蜂支える最新技術】
     都市養蜂にも弱点はある。その一つが「巣分かれ」だ。
     春から初夏にかけて新しい女王バチ候補がサナギへと育つ頃、古い女王バチが約半分の働きバチ、オスバチを引き連れて引っ越す光景が見られる。そっと見守っていれば人を襲うことはなく、やがて新天地へ飛び去るのだが、繁華街では、そうした事情を知らず、ハチの群れに驚く人たちから駆除要請が公共機関に相次いで寄せられてしまうのだ。
     また、寒さでミツバチが全滅する心配もある。
     こうした事象の予兆をつかみ、スマホを通じて養蜂家に注意を促すシステム「Bee Sensing(ビーセンシング)」が昨年から販売されている。開発したアドダイス(東京都台東区)の伊東大輔社長によると、巣箱に設置した温度センサーで異常な温度変化を確認すると、スマホに注意や警報が届く仕組みだ。
    2017年02月15日 10時29分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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