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    セクハラやパワハラ、ネット犯罪に対処するための法律の知識が身に着くコラム。

    夫婦同姓合憲、再婚禁止100日超は違憲 今後は?

    相談者 F.Bさん

    • イラストレーション・橋本真貴子
      イラストレーション・橋本真貴子

     「はい、こちらが新しい社員証です」。結婚を機に名字が変わり、会社の総務部で新しい社員証をもらいました。顔写真は間違いなく私だけど、名字の○○は結婚後の姓。何度見ても自分の社員証とは思えません。本社ビルに出入りするのも、会社のパソコンにログインするのも○○。「ああ、旧姓の私はいなくなっちゃたんだ」。そう思うと何だか寂しさがこみ上げてきました。

     私は、ある雑誌社の編集部に勤める28歳。文芸関係の記事を書いていて、取材でいろいろな大物文化人に会えるのが楽しみです。今秋、取材を通して知り合った5歳年上のカメラマンと結婚しました。長男である彼はいずれ実家に戻り、故郷の写真スタジオを継がなければなりません。

     戸籍上の姓は夫の○○になりましたが、私は今も取材では旧姓で通しています。これまで旧姓で記事を書き続けてきましたし、急に名字が変わると取材先でいちいち説明しなくてはなりません。でも正直、旧姓を使い続けるのがこんなに大変だとは思いませんでした。

     社内でも、編集部内では旧姓で呼ばれますが、社員証や正式な社内文書はみんな○○。パスポートは旧姓の併記が認められていますが、運転免許証は結婚後の名字でなくてなはなりません。銀行口座を開設する時も戸籍上の名前が原則です。そんな私が最近、注目していたのは、民法の夫婦同姓の規定が憲法に違反するかどうかを巡って争われた裁判。もし、結婚後も別の姓が認められていたら、私にも別の選択があったはずだと思うからです。

     先日、その裁判の判決で、最高裁大法廷は「合憲」という初めての判断を示したことが大きく報じられていました。その一方で、「女性は離婚後6か月間再婚できない」とする規定は、100日を超える部分は合理性がなく、「違憲」との判決でした。2つの最高裁の判断について、詳しく教えてください。判決によって、今後、法律が変わることもあるのでしょうか。(最近の事例をもとに作成したフィクションです)

    夫婦同姓規定は合憲、再婚禁止規定100日超分は違憲

     民法における「夫婦同姓」の規定(第750条「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」)と、女性のみに「再婚禁止期間」を定めた規定(第733条1項「女は、前婚の解消又は取消しの日から六箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない」)が憲法に反するかどうかが争われた2件の訴訟の上告審判決が、12月16日、最高裁判所大法廷でありました。

     結論として、夫婦同姓については「合憲」とする一方で、再婚禁止規定については100日を超える期間の部分を「違憲」としました。

     この判決については、言い渡しの前から、特に夫婦別姓について社会的に関心を集めていたこともあり、翌日の朝刊では、「夫婦同姓規定合憲」「最高裁『家族』を重視」「『同姓』の利点評価」「『時代遅れ』原告落胆」「夫婦別姓 意見割れる」「別姓願う女性 落胆」などの大きな見出しが並びました。

     問題とされた両規定ともに、明治時代の旧民法から100年以上続いてきた規定です。しかし、女性の社会進出や権利意識の高まり、結婚や家族に対する価値観が多様化する中で、不都合や不利益を指摘する声が高まり、今回の判決も事前に様々な特集記事が組まれるなど関心を集めました。過去においては、1996年、法務大臣の諮問機関である法制審議会が「選択的夫婦別姓の導入」や「再婚禁止の100日間への短縮」を盛り込んだ民法の改正案を答申していたものの、「家族観が壊れる」などの根強い反対論があり、これまで改正は実現しませんでした。法制審議会の答申が法案提出に結びつかないのは異例であり、この問題の難しさを物語っています。

     17日の読売新聞社説では「日本社会に定着している夫婦同姓は合理的だ。そう結論づけた最高裁の判断は妥当である」とし、また同編集手帳でも「家族とは、身と心を寄せ合って浮き世の雨風に立ち向かう一つのチームだと思ってきた。姓はお(そろ)いのユニホームだろう。夫婦間もそうだが、子どもたちが兄弟姉妹で別々の姓をもつ家族というものを想像できないでいる」と率直な意見を記しています。判決後に実施された読売新聞の緊急全国世論調査でも、「最高裁判所は、別姓を認めていない民法の規定について、合憲との判決を出しました。あなたは、夫婦が希望すれば、それぞれ結婚前の姓を名乗ることができる『夫婦別姓』の導入に、賛成ですか、反対ですか」との質問に対して、賛成41%、反対51%という結果が出ており、夫婦同姓制度に対する、世間の根強い支持が認められました。ただ、前述の社説も、司法判断と制度の是非は別だとして、「生活に密着する法制の見直しは、国民の意識と歩調を合わせて検討されることが望ましい。まずは社会の中で旧姓使用を認める範囲をより広げ、女性が働きやすい環境を整えるべきだ」としており、今後当分の間は、制度の変更そのものより、夫の姓を名乗る女性の不利益緩和をどうするかに議論の重点が置かれることになりそうです。

     なお、夫婦別姓問題に比べて、再婚禁止期間に関する判断の方は、やや影が薄かった印象ですが、実は、最高裁判所が法律の規定を違憲としたのは、戦後わずか10例目であり、歴史的判決と評価できます。

     今回の判決は、現在の民法が定める、再婚禁止期間6か月のうち、100日超分は違憲と明確に判断しており、速やかな法律改正が期待されます。なお、菅官房長官は、記者会見で、再婚禁止期間について「早期に民法改正を行う」と表明しており、既に100日経過後の婚姻届の受理を認める通知が全国の自治体に出されたとのことであり、現時点で既に、運用上は法改正があったのと変わらない状況になっています。

     ちなみに、前回の違憲判決は、結婚していない男女の間に生まれた子(婚外子)の遺産相続分を法律上の夫婦の子(嫡出子)の半分と定めた民法の規定をめぐるものです。この判決については、本コーナー「婚外子差別は『違憲』 最高裁判決で相続はどうなる?」(2013年9月25日)にて解説していますので、興味がある方は参照してみて下さい。

     今回は、これら大きな話題を集めた2つの問題に関して、最高裁判所がどのような判断を下したのか、1、2審も振り返りながら説明してみたいと思います。

    2015年12月24日 12時39分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    蒲俊郎 (かば・としろう
    弁護士(第二東京弁護士会所属)
    城山タワー法律事務所代表
    http://www.shiroyama-tower.com/
    桐蔭法科大学院・教授
    http://toin.ac.jp/lawschool/teacher/kaba/
    桐蔭法科大学院・法科大学院長
    http://toin.ac.jp/lawschool/info-top/message2/
    日本法律家協会会員、日本私法学会会員、情報ネットワーク法学会会員他
     専門分野は、電子商取引全般、労働事件(使用者側)、会社商事関係全般等
     多数の企業の顧問弁護士として日々活動するほか、複数の上場するネット企業の社外監査役なども務める。他方、2010年4月、ロースクールのトップである法科大学院長に就任し、多忙な弁護士業務の傍ら、次の時代を担う法曹の育成にも注力している。
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