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    セクハラやパワハラ、ネット犯罪に対処するための法律の知識が身に着くコラム。

    民泊解禁 どんなことに気をつけたらいい?

    相談者 M.Kさん

    • イラストレーション・橋本真貴子
      イラストレーション・橋本真貴子

     私は30歳のインテリアデザイナー。都内の事務所で働いています。私の場合、忙しい時は徹夜も当たり前なのですが、仕事と仕事の合間には結構まとまった休みがとれます。学生のころから旅行が好きで、こつこつお金を()めては、長期休暇のたびに海外へ出かけてきました。いろんな地域に出かけて、さまざまな国の人と交流するのが楽しみなので、滞在先はもっぱらゲストハウスやユースホステル。ホテルに泊まることはほとんどありません。

     今年2月にもアメリカ・ニューヨークに行き、2週間滞在しました。その際、最近話題になっているインターネットのサービス「Airbnb(エアビーアンドビー)」を初めて利用してみました。貸したい部屋と借りたい旅行客を仲介する、アメリカ発の民泊サービスのことで、旅行好きの友人のほとんどが利用した経験があったため、思い切って民泊をしてみることにしたのです。

     滞在した場所はマンハッタンから少し離れていましたが、緑豊かで治安も問題ありません。アメリカでデザインの勉強をした学生時代に戻ったかのような気分でニューヨークを満喫しました。「子どもはみんな独立したので、若いお客は大歓迎だよ」という50代後半の家主さんとも仲良くなり、一緒にお酒を飲みに行ったり、おすすめの観光スポットを教えてもらったりと、楽しい時間を過ごすことができました。ニューヨークはホテルの宿泊料が高いことで有名ですが、個人宅を利用したことで料金もずいぶん安く抑えることができました。

     帰国からしばらくたちますが、あのときの楽しかった経験が忘れられません。そこで最近、ホストとして都内にある自宅マンションの一室を旅行客に貸し出せないかと考え始めました。実は、2年前に株で利益が出たため3LDKのマンションを購入して住んでいるのですが、一人暮らしの私には広すぎて部屋の一つはほとんど使っていません。その部屋を旅行客に貸し出すことができれば、国際交流ができる上に、ちょっとした副収入にもなります。

     ところが、ネットでいろいろ調べている中で、民泊を行うためには、実は旅館業法の許可が必要なことを知りました。どうやら、許可を得ずに行って摘発されたケースもあるようですし、騒音やゴミ出しなどで近隣の住民とトラブルになっているケースもあると報道されています。私一人の手に余るのではないかとだんだん不安になってきました。

     政府は、2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、外国人観光客の増加で不足する宿泊施設を確保するため、民泊の規制を緩和しつつあるようです。今年に入って、東京都大田区や大阪府で、国家戦略特区の規制緩和を活用した民泊が始まっているほか、旅館業法の枠組みでの民泊を行いやすくするために、制度見直しの検討も進められていると報道されていました。

     そもそも、民泊を始める上で、法律上どんな問題をクリアしなければならないのでしょうか。政府の規制緩和に向けた取り組みの現状や、民泊を始める上で気をつけるべきことについても教えてください(最近の事例をもとに創作したフィクションです)。

    (回答)

    民泊サービスの広がり

     自宅やマンションの空き部屋などの一般住宅を、宿泊施設として貸し出し、旅行客を有料で泊める「民泊サービス」が広がりを見せ始めています。背景には、モノやサービスを個人間でやりとりしたり、共有したりする「シェアリングエコノミー」という新たなビジネスモデルの登場があります。その一つが、アメリカで08年に誕生した、Airbnbに代表される、自宅の空き部屋を貸したい人と宿泊先を探す旅行者とを仲介するサービスです。

     これによって、ホテルや旅館ではなく「他人の家」に泊まるという、新しい選択肢が生まれました。質問者も指摘しているように、部屋を提供する側は空いている部屋を有効活用できます。一方、旅行者の側には宿泊料を安く抑えられ、その国の地元の人々の暮らしを体験できるというメリットがあります。

     シェアリングエコノミーの広がりとそこに潜む問題点については、「民泊ビジネスの是非 ネットの新事業で失敗しない法律武装とは?」(15年8月26日掲載)において、エアビーアンドビーだけでなく、タクシーやハイヤーの配車サービスとして知られるUber(ウーバー)も取りあげて解説しています。興味がある方はそちらも参考にしてください。

     当時は、エアビーアンドビーもウーバーも、法律の問題もあって、普及するのは当分、難しいだろうと思われていました。ウーバーがタクシー事業者などの根強い抵抗に遭い、いまだに苦戦しているのに対して、エアビーアンドビーが実施している民泊は、着実な広がりを見せています。類似のサービスを行う企業は次々と登場しており、戸数の絶対数が多い東京だけではなく、全国で民泊ビジネスが注目され、民泊専用に部屋を購入・貸借する例も出てきているようです。

     他方、法制度の整備が追いつかない状況下で、許可などを受けないまま民泊を営業しているケースが多く見受けられ、問題となっています。例えば、京都市が行った調査によれば、インターネット上に公開されている市内2702の民泊施設について、その施設の情報と京都市が管理する旅館業の登録情報を照合したところ、少なくとも68.4%が無許可だったとのことです。

    2016年05月25日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    蒲俊郎 (かば・としろう
    弁護士(第二東京弁護士会所属)
    城山タワー法律事務所代表
    http://www.shiroyama-tower.com/
    桐蔭法科大学院・教授
    http://toin.ac.jp/lawschool/teacher/kaba/
    桐蔭法科大学院・法科大学院長
    http://toin.ac.jp/lawschool/info-top/message2/
    日本法律家協会会員、日本私法学会会員、情報ネットワーク法学会会員他
     専門分野は、電子商取引全般、労働事件(使用者側)、会社商事関係全般等
     多数の企業の顧問弁護士として日々活動するほか、複数の上場するネット企業の社外監査役なども務める。他方、2010年4月、ロースクールのトップである法科大学院長に就任し、多忙な弁護士業務の傍ら、次の時代を担う法曹の育成にも注力している。
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