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    住まいに関する特集コーナーです。

    太陽光照明 室内に自然光

    熱は遮断/体のリズム整える効果

    • 廊下に太陽光照明を付けた真田さんの自宅(滋賀県守山市で)
      廊下に太陽光照明を付けた真田さんの自宅(滋賀県守山市で)

     自然の光を効率よく建物内に取り込む「太陽光照明」を導入する住宅や事業所が少しずつ増えている。

     通常の天窓より広い範囲を照らし、室内に熱を伝えにくいのが特徴。健康面の効果も注目されており、環境省も普及に向けた取り組みを始めた。

     天井にある円形の光源から広がる光が、窓のない廊下を柔らかく包む。手帳に書いたメモが十分に読める。5年前から自宅で太陽光照明を使う滋賀県守山市の元中学教諭、真田善之さん(63)は「夜間は使えないが、昼間は曇りの日でも、電灯なしで十分に明るい。室内が暑くならないのもいい」と満足そうに話した。廊下に取り付けて快適だったため、農作業小屋や離れのリビングにも設置した。

     真田さん宅の太陽光照明は、屋根に設置した特殊なアクリル製のドームから採光するタイプ。斜めに差し込む太陽光を、このドームで下向きに曲げ、銀を混ぜたシートを内側に張りつけたアルミ製の管(直径25センチ)を通して取り入れる。

     管の内側は鏡のように加工されており、光は反射を繰り返しながら、室内に導かれ、管の下端にあるレンズのような拡散板で光を曲げ、照らす範囲を広げている。豪州の「ソーラーチューブ社」が開発した。

     ソ社の輸入代理店「井之商いのしょう」(大津市)によると、太陽光をそのまま取り入れる通常の天窓は、光の当たる場所が高温になり、当たらない場所は暗くなる欠点があるが、この管型のシステムは採光時に、温度上昇の元になる赤外線の約半分をドームで大気中に反射する。

     残りの赤外線はアルミ筒の上部で熱に変わり、屋根や屋根裏を暖めるが、部屋や廊下は離れているため、室内の温度はほとんど上がらないという。東日本大震災前に年間約600台だった出荷台数は昨年、750台に増えた。今年は1000台に増える見通しだ。

     太陽光照明を扱う企業で作る「太陽光採光システム協議会」(東京)によると、太陽光照明には「管型」のほか、「天窓型」、「光ファイバー型」の3タイプがある。住宅に後付けしやすい管型と光ファイバー型の国内市場は推定で年間10億円。天窓型は、金属屋根などのガラス天窓の下に散光シートを取り付けたシンプルなタイプで、大型商業施設を中心に普及している。

     光ファイバー型は、太陽を追尾する専用のレンズを使って集めた光を細いファイバーで運ぶ。室内に管を通すための大きな穴を開ける必要がなく、ベランダにも設置しやすい。

     健康面の効果も注目される。照明に詳しい千葉工業大の望月悦子教授(40)(光環境学)は「太陽光の強弱や色の変化は人間の本来のリズムに合っており、健康にいいことを示す研究データは少なくない」と指摘。「外出する機会が少ない高齢者向けの施設などで、積極的に導入を広げていくべきだ」と指摘する。

     普及の最大の課題は価格。家庭用は8畳間用の蛍光灯照明が1万円前後で市販され、設置工事費を入れても数万円で済むのに、太陽光照明は最も手頃な管型でも1台15万~40万円、光ファイバー型は約80万円にもなる。

     井之商の試算では、40ワットの2本の蛍光灯を一日中つけている部屋に管型の照明を1台導入した場合、昼間に蛍光灯を消して節約できる電気代は年間7000円から1万円。一定の省エネ効果は期待できるが、広く普及させるには、設備費用をさらに安くする必要がある。

     ソ社は豪州と米国で約210億円を売り上げているが、10兆円規模といわれる世界の照明市場からみれば、ごく一部にとどまっている。

     照明の省エネを進めるため、環境省は昨年度、井之商を含む2社の太陽光照明の省エネ性能の実証試験を行った。結果は6月に公表される予定だ。望月さんは「公的機関のPRを通じて省エネ性能や、光の質の良さが理解されることが重要。普及が進めば価格も下がるだろう」と話している。(江村泰山)

    2015年05月25日 08時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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