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    住まいに関する特集コーナーです。

    高齢者「生涯活躍のまち」 住宅、医療も整備移住促す

    • 店で働く丸田さん(右)。「高齢者にも役割が必要なんです」(栃木県那須町の「ゆいま~る那須」で)
      店で働く丸田さん(右)。「高齢者にも役割が必要なんです」(栃木県那須町の「ゆいま~る那須」で)

     住宅、医療、介護などを一体的に整備した地域に「生きがい」の要素を加え、都市部の元気な高齢者に移り住んでもらおうという試みが動き始めている。国の「生涯活躍のまち」構想だ。「活躍」を軸に据えたまちづくりは、どこまで高齢者の心をつかむことができるだろうか。(針原陽子)

     東北新幹線・新白河駅から車で15分ほど走ると、別荘地のような場所が現れる。株式会社「コミュニティネット」(東京)が運営する「ゆいま~る那須」(栃木県那須町)。サービス付き高齢者向け住宅だ。

     バリアフリー仕様で、常駐職員による安否確認サービスと、生活相談サービスが提供される。ロッジ風の全70戸に、現在約60人が暮らしている。

     今、ここに国や自治体関係者らの視察が相次いでいる。理由は入居者の「活躍ぶり」にある。

     今年5月、東京都内から移り住んだ丸田輝子さん(72)は、ほかの入居者と2人で、一般にも開放されている「食堂棟」の一角で店を切り盛りする。長くブティックを経営してきた経験を生かし、自ら仕入れた服のほか、入居者の手作り品、地場産品などを販売。観光客にも好評だ。

     このほか、男性2人が駅などを回る送迎車を運転。かつて老人ホームの厨房ちゅうぼうで働いていた女性は、外部の人も利用できる食堂で働き、週1回はここで居酒屋も開く。ソバを打って販売する男性もいる。

     丸田さんは、旅行や観劇などを楽しむ生活に飽き足らなくなって移住を決めたという。「やりたいことができて幸せ」と話す。

     「生涯活躍のまち」は、今年6月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」に盛り込まれた。

     背景には、医療機関や介護施設が不足する大都市圏の問題と、人口減で衰退する地方の悩みがある。シニア層が心配を抱えずに生き生きと暮らせる場を地方に整備し、双方の課題を解決しようという狙いだ。

     全国の200を超える自治体が受け皿作りを進める意向を表明している。移住者の介護費用を、元々住んでいた自治体が負担する「住所地特例」が拡大され、移住先自治体の負担が軽減されたことも追い風だ。

    • 託児所になっている古民家で、子どもの面倒をみる横地さん(奥)(愛知県長久手市の「ゴジカラ村」で)
      託児所になっている古民家で、子どもの面倒をみる横地さん(奥)(愛知県長久手市の「ゴジカラ村」で)

     愛知県長久手市にある「ゴジカラ村」も注目を集める。1万坪超の敷地に、60歳以上の人向けのケアハウス、デイサービス、訪問看護ステーション、特別養護老人ホームなどがそろう。託児所や幼稚園、専門学校など若い世代向けの施設もある。

     ケアハウスに住む横地八重子さん(72)は、5年前、夫と一緒に名古屋市から移住した。託児所の子どもの世話をしたり、幼稚園児を出迎えたりする仕事で忙しい。「子ども好きなので楽しい。介護が必要になっても安心」と言う。

     ゆいま~る那須では入居時に家賃の前払い分として1000万円強が必要で、食費や管理費などで月12万円程度かかる。ゴジカラ村のケアハウスは所得に応じた軽減措置があり、月約7万~12万円を負担する。

    魅力どう打ち出す 受け入れ推進の自治体

     国は10月末、「生涯活躍のまち」構想に沿った整備を目指す37自治体に約600万~8700万円の交付金を出すと決定、来年にはモデル事業も始まる。各自治体は元気な高齢者の移住で地域が活性化し、医療・介護関連の雇用も生まれると期待する。

     現状では、買い物など生活の利便性では都市部に軍配が上がるだけに、都市生活のメリットに対抗する新たな魅力を打ち出せるかが鍵となる。

     長く高齢者の住まい作りに関わり、今は「ゆいま~る那須」で暮らす一般社団法人「コミュニティネットワーク協会」副会長の近山恵子さんは「住む人たちが、そこが自分に合うかどうか判断できる情報をしっかり出すことが大切。費用を安く抑える方策や交通の利便性確保も必要ではないか」と話す。

     高齢者住宅のコンサルティングを手がける「タムラプランニング&オペレーティング」代表の田村明孝さんは「住み慣れた土地を離れるのは心身ともに大変で、実際に移住に踏み切る高齢者がそれほどいるとは思えない。交付金で立派な建物が増えるだけ、という結末になりかねない」と厳しい見方をしている。

    地域の特色とニーズ踏まえ

     お茶の水女子大学名誉教授で、「生涯活躍のまち」構想を検討する有識者会議委員、袖井孝子さんの話

     この構想は、都市部で生活しづらくなり、地方が衰退する中で出てきた。移住者もまちづくりにかかわり、地域が活性化するなら大きな意義がある。

     ただ、単に高齢者向けの住宅と医療・介護の拠点をつくって「さあ来てください」と言っても駄目。まずは自治体が、地域の特色と、移住希望者のニーズをきちんと分析して計画を作るべきだ。移住者をサポートする人材も必要。重要なのはハードでなくソフトであり、自治体は覚悟を持って取り組んでほしい。

    都内で高い移住への関心

     内閣府が東京都内在住の18~69歳男女を対象に昨年行った「今後の移住に関する意向調査」では、「東京都から移住したい・検討したい」と答えた人は41%。50代男性は51%に上った。一方、全国を対象にした今年の調査では、「別の地域へ移住したい」との回答は19%。大都市部の人のほうが移住への関心は高いようだ。

    自分には何ができるか?

     取材を終えて 「生涯活躍のまち」のモデルである2か所は、立地も特徴も異なるが、どちらも「一人暮らしだったら、こういう所に住むのもいいな」と思わせる場だった。質のよい住まいがあり、いざとなれば介護も医療も受けられる、というのは安心だ。最大のポイントは「住民が『活躍』できる仕掛けがある」ことらしい。役割があることと言い換えてもいい。

     20年後の自分を考えた。活躍しようにも、老後に生かせるようなスキルは持ち合わせていない。今から考えておくべきかもしれない。

    2015年11月13日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun

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