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    住まいに関する特集コーナーです。

    仕事生み出す 人材求む

    移住増へ 快適な住環境アピール

    • 古民家を改修した「研究サロン」で、高橋さん(右)がのんびり仕事中。近所に住む西塔さん(左)と妻ともみさんを交え、ホタルの話に花が咲いた(福岡県上毛町で)
      古民家を改修した「研究サロン」で、高橋さん(右)がのんびり仕事中。近所に住む西塔さん(左)と妻ともみさんを交え、ホタルの話に花が咲いた(福岡県上毛町で)
    • 高橋さんが移住を決めた有田集落
      高橋さんが移住を決めた有田集落

     「ヘンタイさん、いらっしゃい」と移住を呼びかける小さな町がある。

     人口減少時代のまちづくりの現場で求められるのは、常識にとらわれない、自立した人材だ。町に雇用の受け皿は多くないが、手つかずの里山と気持ちのいい住環境がある。そんなアピールにひかれて、面白い「ヘンタイ」たちが続々と集まってきた。

     福岡県の東端に位置する人口7900人の上毛こうげ町。棚田を抜けて急坂を上りきると、11戸の有田集落がある。ここの空き家に京都市から高橋たかしさん(36)が引っ越してくることになった。

     ウェブ制作で活躍するプログラマー。旅と猫が好きで、「住む場所に縛られずに生きる」が信条だ。2012年秋、高橋さんは上毛町が企画した「お試し居住」で1か月滞在した。インターネット環境がなく、家は古いが、お互いに信頼して玄関にカギをかけない暮らしは新鮮だった。

     その後も10回ほど町を訪れた末、一足先に夫婦で集落に移り住んでいた西塔さいとう大海もとみさん(30)に「ここに移住したい」と切り出した。

     町に仕事は少なく、地域の人だけでは人手もアイデアも足りない。それなら、まちづくりに関心がある人、手に職のある人を呼び込もう、というのが町の戦略だ。「ヘンタイ求む」を合言葉に、お試し居住のほか、野草ビジネスの開発、人材交流の拠点となる研究サロンなど、次々と仕掛けを打ち出している。

     現在、「地域おこし協力隊」として町の移住対策を手伝う西塔さんは、東大大学院で水素エネルギーを研究していた。世界中のサバイバルマラソンに挑む元新聞記者や、東京のウェブマガジン編集部の女性4人組も、上毛のファンになった。3年で12人が移住。まさに「ヘンタイ」と呼びたくなる顔ぶれがそろいつつある。

     「不便さはあるけれど、それだけ進化の余地もある町。面白い人も集まってくる。ここなら豊かな暮らしを自分なりに作っていける」。高橋さんは言う。

     「地方に本当に必要なのは、雇用より住まい。心地よく住めることが移住への気持ちを高めてくれる」と西塔さんは思っている。

     東日本大震災後、西塔さんは宮城県気仙沼市でボランティアに関わった。復興事業の会社を設立、3年で350人を雇った。仕事がなくなれば人は去っていく。雇用も当然大切だが、「地域に根づくのは『雇用される人』ではなく、仕事を生み出す人材」と気づいた。

     そのころ、「西粟倉・森の学校」の牧大介社長(41)と出会い、大いに触発された。人口1500人の岡山県西粟倉村で森林資源を活用して床板タイルなどを生産し、5年で黒字化に成功した起業家だ。牧さんも「快適な住まいがあれば人は集まる」と考えていて、2人は意気投合した。

     西粟倉がたどり着いたのは「未完成の箱」という発想だ。村産材で防寒のしっかりした一軒家を格安で建て、内装などは入居者自身に任せる。「新しい価値を生む『ヘンタイ』は暮らし方も自ら創造していく」からだ。8月までに1軒建て、3年後の本格量産を目指す。

     高橋さんが借りる古民家は築100年超。西塔さんや地域の人たちと、少しずつ手直しするつもりという。

     町の取り組みは緒に就いたばかりで、いまだに賛否両論ある。「ヘンタイを集めるのもいいが、農業の担い手を育てないと里山が荒廃する」と町議会で指摘されたこともある。

     ところで高橋さんは、このまま定住するのだろうか。「まだ分からない。『定住』と『遊牧』の間の住まい方はないものか、実験してみたい」。やはり「ヘンタイ」らしい答えが返ってきた。(高倉正樹、写真も)

    2015年06月09日 08時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun

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